アメリカ人の人種構成はどうなっているのか

アメリカ大統領選も山場を迎えている。先月、「アメリカ大統領史100の真実と嘘」という本を出したが、書いていてつくづく感じるのは、アメリカは移民の国であり、国民ひとりひとりが良くも悪くも過去の十字架を背負っている国だということだ。

ニューヨークに到着した移民(Virginia State Parks/Flickr)

アメリカでは国勢調査のときもどこからの移民か聞く。日本でも移民かどうか、移民ならどこから来たか聞く項目を作ってもいいし、必要だとも思うが、許されそうもない。日本政府は移民についての実態についてなんら統計も持っていないようだ。

アメリカではどういう人種構成になっているのか。もちろん、アメリカ先住民もいるが、人口に占める割合は僅かだ。それでは、どこから来た人が多いのか。本に書いたことに少し補足して紹介しよう。

独立当初は英国系(イングランド、スコットランド、アイルランドの合計をこう呼んでおく)65%で、黒人奴隷が19%、ほかにドイツ、オランダなどだった。

19世紀以降では、ドイツからの移民がもっとも多く中西部の農民の主力になり、イギリス、イタリア、アイルランドがそれに次いでいたが、近年ではメキシコがもっとも多く、中国なども伸びている。

ちなみにトランプ氏はドイツ系、ブッシュ家、バイデン家が典型的な英国系だ。ケネディ家はアイルランド、ジャックリーン夫人実家はフランス、ペロシ議長やクオモ知事はイタリア。

アイルランド系初の大統領となったケネディ氏と、フランス系のジャクリーン夫人(Wikipediaより:編集部)

メキシコなどからの移民はヒスパニックと呼ばれているが、人種ではスペイン系、アフリカ系、インディオ系など問わずなので、ヒスパニックと非ヒスパニックを分けたり、ヒスパニックかどうかは問わず人種で分ける統計しかない。 現在は20%弱だが、2050年には28%と予想されている。

中南米でも英国系の旧植民地から来たら、ヒスパニックでなく、それぞれの人種で分類される。民主党のハリスなど、アングロサクソンと黒人の混血なので黒人と分類される。

ヨーロッパ系でどこの国からが多いかは、移民の数とは少し違う。イタリア系とかアイルランド系のようにカトリックは子だくさんだから伸び率が高い。これはヒスパニックの人口比がどんどん増えている理由でもある。

また、苗字からの推計も可能だが、発音のやさしさなどからドイツ系がシュミットをスミスという英語風のものに変えることも多いし、アフリカ系の場合は奴隷主の英国風の名前を引き継いでいるのが普通だ。アメリカの黒人は白人男性と黒人女性の子の子孫というのが反対より圧倒的に多い。オバマ氏がケニアのルオ族の名字なのは、アフリカ系の留学生と白人女性の子という特異な由来だからだ。

今度は、2010年の国勢調査のときに複数回答可能で自己申告されたものでは、ドイツ系17%、アフリカ系13.6%、イギリス系12.6%、アイルランド系10.9%、メキシコ系10.9%、アメリカ系6.7%、イタリア系5.9%などで、このあたりが現状だろう。

ここで、「アメリカ系」というのは、先住民ではない。ルーツはともかく自分のアイデンティティはアメリカであるという分類項目を創ったわけだ。おそらく、ハリスなどこの分類を申告したのではなかろうか(自分はアメリカンだといっているので)。

また、別の調査では、アメリカ生まれでない人を「移民」だとすると13.3%で、そのうち、帰化していない人が7.1%、不法な形で入国しているのは4.4%ということだ。