小泉大臣に告ぐ!レジ袋よりはるかに深刻「廃プラ産廃の闇」

高橋 富人

私の地元である千葉県佐倉市で、予見されていた「廃プラスチック事案」が発生しました。

まずは現場の写真をご覧ください。いわゆる「大量の廃プラなどのゴミの山」がかなり広範囲にわたっているのがおわかりいただけるかと思います。

冒頭「予見されていた」、と言ったのは、中国等による廃プラ締め出し政策(中国等の国で輸入をしていたプラスチックごみ等を、全面的に輸入禁止する政策)といった世界の動きを見れば、必然である事象であったからです。

参考:日本経済新聞 2019年12月18日「廃プラ100万トン行き場失う 中国輸入規制で国内滞留」

事実、本年3月の私の一般質問でも、「中国による廃プラ締め出し政策」以降、佐倉市は悪質な産廃業者などに狙われる立地であることを前提に、対策強化に関する提案を実施していました。

参考:拙ブログ「【2020年3月4日】一般質問:佐倉市の不法投棄対策について

これは、佐倉市にかかわらず、全国で「今起きている」切実な問題です。悪辣な者たちは、日本中で、地方自治体も警察も手出しできない裏技を駆使し、大量のゴミを放置し、姿をくらませている。にもかかわらず、ローメーカーたる国会議員や小泉環境大臣の本件に対する課題意識は、今のところほとんどないように見受けられます。

環境省サイトより

本件に関する議員立法は筋から言って期待していませんが、せめて小泉大臣が本気を出して環境省の官僚を動かし、法整備の道筋を早急につけてもらいたいと考えます。逆に、それができなければ、現状の問題を解決できない大臣として後世に汚点を残すことになります。

少し長くなるので、本件の問題の要旨をまとめます。

  • いわゆる「廃プラ」は、中国等による「廃プラ国内持ち込み禁止政策」により、行き場がなくなった。
  • これまで「廃プラ」を輸出用の有価物として貯めこんでいた業者は、行き場を無くした「廃プラ(=産業廃棄物)」を処理する必要に迫られた。
  • 他方、大量の「産業廃棄物」は処理するのに大金がかかることから、①人目に付きにくい郊外に不法投棄、②法律の抜け道を使い大量に集積、などで当該産業廃棄物を放置している。

佐倉市で現在進行中なのは、法律の抜け道を使い、大量に廃プラスチック等を集積している事案です。

どうしてこんな事態になったのか

本件の当事者などからヒアリングした内容の概要を、予断を交えず書きます。

本件は、そもそも佐倉市近郊の某市(以下「Z市」とする)の郊外に積まれていました。これらを「貯めこんで」いた人物をX氏としますと、X氏に「貯めこむための土地」を用意したのが、佐倉市に当該「廃プラスチック等」を持ち込んだY氏です。

Y氏は、Z市の郊外の土地を「借りて」X氏の「廃プラ置き場」を提供していました。しかし、先のとおり中国などに輸出すればそれなりの値段がついていた廃プラの行き場がなくなったことから、X氏は廃プラを放置したまま姿をくらませてしまいます。

X氏のために土地を借りていたY氏は、Z市から強く退去を要請されました。困ったY氏は、佐倉市の土地を買い、そこに廃プラ等の持ち込みを開始し、結果写真のような状態になり、今に至ります。

以上の経緯を信じるならば、Y氏は被害者です。Y氏から直接ヒアリングしたところでは、本件の処理のためにすでに1500万円以上の借金をしている、とのことでした。

一方、周辺住民は、文字通り「とても困っている」状態です。

当たり前ですが、写真のようなゴミが、突如自宅の隣近所に出現したら、それこそ大迷惑です。

仮に台風がきてゴミが周辺に散乱したら、乾燥が激しい冬場に出火したら、Y氏に責任能力があるのか?あるいは、Y氏が破産してしまったり、行方をくらませてしまったりした場合、山積みにされたゴミは、いったい誰が責任を持つのか?

しかし、この状況に対しては、行政は「ほぼ打ち手がない」のです。強いて言えば、Y氏にゴミを定期的に処理業者に任せて処分する約束を取り付ける程度しかできない。その理由は、「取り締まる法律がないから」です。

ということは、同じ手法を使えば、日本は「ゴミ放棄し放題国家」ということになります。

廃プラ規制の現状と課題

もちろん、産業廃棄物については、いわゆる「廃棄物処理法」という法律が用意されています。

また環境省でも、都道府県や政令市に対して「廃プラスチック類等に係る処理の円滑化等について」という通知を出しているところですが、内容はなんとも付け焼刃というか、とても現在おきている現象を解決できる内容にはなっていないように感じます。

参考:環境省「廃プラスチック類等に係る処理の円滑化等について

例えば、このような「廃プラの山」について、当事者から「価値のあるもので、ゴミではないのだ!」と言われた場合、それを「ゴミ認定」つまり、産業廃棄物と認定するのが難しい。ゴミではないものを規制することはできませんから、その第一歩でつまずいてしまいます。

そこで地方自治体が「ゴミ認定」のために参考にするのが、環境省から出ている「行政処分の指針について」という通知内の4ページにある「廃棄物該当性の判断について」という部分です。他方、これを参考にしたとしても、最終的にゴミ認定の判断は地方自治体に任されている。

参考:環境省「行政処分の指針について(通知)

打ち手を作るための「覚悟」

判断を任された地方自治体としては、間違えれば訴訟になりかねない危険な事案となるため、慎重にならざるをえない。よって、これをもう少し踏み込んで、例えば「180日間流通しなければゴミとみなします」みたいな、画一的な判断ができるような法律を作る、というのも一案でしょう。

過去「野積みされた使用済みタイヤ」に対して同様の規制が行われたことがあるので、無理な発想ではありません。ようは、この「廃プラ問題」をどこまで覚悟をもって取り組むか、という話です。

この問題については、ゴミ認定の課題以外にも、出どころ規制の強化や、行政代執行にまで至った場合の予算補助政策、量刑の変更、監視体制の強化策など、いろいろなアプローチが考えられますが、そういう法や政策のテクニックは環境省の官僚の皆さまに知恵をだしてもらいましょう。

中国で規制がかかる前の2017年の廃プラの輸出量は約143万トン程度。少なくとも、先般有料化したレジ袋より、物量的にもはるかに深刻なのが、中国による廃プラ締め出し以降の「廃プラ産廃問題」です。

参考:独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)「行き場を失う日本の廃プラスチック」

国の政策を預かる国会議員や大臣をはじめとする閣僚、関係省庁の官僚の皆さまには、ぜひ本件に早急に取り組んでいただきたいと、強くお願いいたします。