中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する所感

中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)に関して、10月9日付で主要中央銀行グループが報告書「中央銀行デジタル通貨:基本的な原則と特性」を公表し、また同日、日銀が取り組み方針を公表したこともあり、かつ13日のG7蔵相・中央銀行総裁会合においてもCBDCへの言及があったことで、様々な方面からの関心が高まっています。

今後、日本においても検討が進められていくわけですが、大きな方向性についての私個人の所感を述べさせていただきたいと思います。

fujiwara/写真AC

まず、世界の変化のスピードを考えれば、将来的には確実に現金からデジタル通貨への移行は避けられないということを我々は認識する必要があります。その前提の中で、どのようにして考えられる課題を解決していくことができるか、そして、今の金融業界が大きな混乱なくその変化を受け入れることができるか、を考えていくべきです。

その観点から今考えるべき視点をいくつか書かせていただきたいと思います。

(1)現状、中国がデジタル人民元の発行に向けてかなり前のめりになっています。かつて「円の国際化」に取り組んだ身からすれば、中国のデジタル人民元が、人民元ということではなくデジタル通貨という側面においてその勢力圏をアジアや途上国において伸ばすことがあれば、これは国際経済の安定の面からかなり大きな懸念事項です。

(2)かつての「リブラ」に限らず、通貨バスケットに根拠を置くデジタル通貨が世界的に普及することとなった場合、円という独自通貨により経済圏として区分され、それ故に様々な経済金融危機の際にその通貨が防波堤となり、かつ為替という調整弁がある中で金融政策によりマクロ経済運営を安定的に行えてきたというこれまでの国家による安定的な経済運営という基礎が崩れるということとなってしまいます。円やポンド、ドルなどの各国通貨でデジタル通貨を発行することで、金融政策の効果が失われかねない、そのようなリスクを最小化することができます。

(3)マネタリーベースへの影響や、現在の金融構造などに与える影響を最小限に抑えることが、今考えられている設計であれば担保できるのではないかと考えられます。したがって、基本的な金融システムの安定性や、信用創造、価値創造のエコシステムを大きく損なうことなく導入することができることを前提に考えていいと思われます。もちろん、取引量が圧倒的に大きくなれば、その負荷に耐えられる安定的なシステムが絶対的に必要ですので、そこは乗り越えねばならないポイントです。

(4)基本的にデジタル通貨はデジタルである以上は、ログは残ることになるはずです。今の現金が有していた匿名性という性質をどのようにして担保するか、あるいは、誰から見られるかを含めた、情報のセキュリティや法制度、技術面の整備が必須です。偽造防止などの論点もありますが、同時に、制度の設計次第では、様々なビジネスイノベーションに大きく寄与する有為なビッグデータにつなげることがより可能になりますので、経済の競争力向上に大きく資する可能性があると考えられます。

(5)日本は現金比率が20%程度と大変高い国ですし、間接金融の割合が非常に高い国です。このような特性を持った経済である日本の現状を踏まえた、システム原則の構築をグローバルにするほうが日本にとってメリットが大きいことを考えれば、いずれその方向に進むのであれば、早期の段階から議論をリードする立場になったほうが良いと考えるべきです。

こうした意識の下で、日本の将来にとって最も良い選択がどうあるべきか、しっかりと検証し、実行してまいりたいと思います。


編集部より:この記事は、衆議院議員の鈴木馨祐氏(神奈川7区、自由民主党)のブログ2020年10月16日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「政治家  鈴木けいすけの国政日々雑感」をご覧ください。