大阪住民投票、3度目はないでしょう!

11月1日に投開票される「大阪都構想」の是非を問う住民投票が10月12日に告示され、選挙さながらの論戦が大阪では繰り広げられています。

今回で2回目となった住民投票については、関西のメディアでは報道がかなりされていますけれども、全国の皆さんにとってはあまり知られていないのかもしれません。

それでも、5年前の平成27年(2015年)5月に行われた大阪都構想の住民投票を皆さん覚えていませんか。前回の住民投票では大阪都構想が否決され、当時の橋下徹市長は任期満了で市長を退き政界を引退しました。その時の結果は賛成が694,844票、反対が705,585票と、わずか1万741票差で大阪都構想は実現しませんでした。
大阪都構想を主導する大阪維新の会が再度挑戦ということで、今回が2回目。

橋本氏のあと大阪市長になったのは吉村博文氏、そして府知事は住民投票前と変わらず松井一郎氏でした。それぞれ議会の第一党は、ともに大阪維新の会、そういう意味では、首長と議会がこの議論を進めてきました。そして、平成31年(2019年)に行われた大阪府知事・大阪市長のダブル選挙で、市長都知事が入れ替わり、前回反対だった公明党も大阪都構想の賛成側に回って今回の住民投票にこぎつけたわけです。

公明党は都構想に納得して賛成にまわったというのではなくて、自公共闘で衆議院小選挙区で公明党が当選している関西の6選挙区に維新が対抗馬を立てると言い出したことで、公明党からすれば、これに屈した形で賛成にも割りました。

一応の理屈立てとして公明党の山口代表は、「大阪府知事・市長のダブル選で維新が大勝したことで、都構想を実現してほしいとの民意が示された。また、(住民サービスの維持など)公明の提案が全部受け入れられた」とのことです。

私は、5年前のときも都構想には賛成でした。ですから、橋本氏の要請で大阪市の特別顧問にもなりました。その理由を問われれば幾つもありますが、横浜市長を経験したことで、政令市と当該府県との二重行政をよくよく実感しているからです。

横浜市と神奈川県の二重行政は幾つもありましたけれども、それ以上に大阪市と大阪府の二重行政は横浜市とは比べ物にならないほどの事例があります。これは、私のように首長をやった経験がある人にしか理解できないでしょう。

河川や道路管理、企業や観光誘致などは二重行政になっていますし、もっとわかりやすいことで言えばそれは人口です。横浜市は日本最大の市で人口が375万人、大阪市はそれに次ぐ275万人。100万人の差はありますけれどもこれは他の市とは比べ物にならないぐらい多すぎます。そこに市長はたった1人いませんので、基礎自治体としてははっきり言ってキャパオーバーと言えるわけです。

実際には区長が区民サービスの責任者ということになりますが、責任者とは言っても法律上の責任者ではなく、法律上は首長が責任者でもあります。また、区長といっても選挙で選ばれてるわけではありません。皆さんのよく知っている東京にも港区や杉並区など合計で23区があります。

この東京都の区と横浜や大阪の区の何が違うのかといったら、横浜や大阪は行政区、東京は特別区と言い、一つの自治体になっています。区長も議会も選挙で選ばれるのに対し、行政区の方はいわば市の一つの区分に過ぎず、区長は市長が任命します。一言で言えば、特別区の区長は区民の顔を見て仕事しますが、人事異動で行った行政区の区長は市長の顔を見て仕事するんです。恐ろしいけれども本当の話です。人間は誰が自分を任命したのか、選んだのか、そっちの方を見て仕事するんですから。

さて、11月1日の住民投票まであと11日。今回が2回目の住民投票となりますが、3回目の住民投票はないと私は断言します。自分たちの自治の仕組みを投票によって決める機会は滅多にありません。賛否はみんなそれぞれが考えていただきたいと思いますけれども、前回の投票率は66.83%と各種選挙に比べても非常に高い投票率でした。今回も大阪市の方はぜひ参加して、皆さんで今後の大阪を決めてください!


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年10月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。