部活動顧問を大量処分した鳥取県教委の厚顔無恥

以前、再任用後わずか 4カ月で不当な雇い止めに遭った自分自身の体験を踏まえて記事を書いた時、「福島県教委の厚顔無恥」というタイトルを思いついたが、結局、そうはしなかった。やはり、編集部が一定の節度を求めるだろうと考えたからだ。しかし、今回はこのタイトル以外にはあり得ない。よくもまあ、恥ずかしくもなく、こんなまねをと、心の底から呆れ返ってしまった。

鳥取県教委、部活遠征で教員83人処分 生徒をマイカーに 実態に合わずの声も(毎日新聞)

写真AC:編集部

かなり大きく報道されたので、ご存じの方も多いと思うが、部活動の練習試合などの際、自家用車に生徒を乗せて引率していた運動部の顧問83名が、鳥取県教育委員会から内部規定違反だとして処分を受けたというのが概要である。

とにかく、突っ込みどころが満載なのだが、まずは県教委が練習試合を公務とみなしていないとは一体何事か。部活動顧問は各校の校長が年度初めの職員会議で正式に任命したもので、引率するのは全員がその学校の生徒。「練習試合などの引率は職務命令ではない」とあるが、原則的には伺いを校長に提出しているはずで、鳥取県内の部活動顧問が揃って校長に無断で生徒を連れ歩いていたとは思えない。

それとも、練習試合は生徒引率であっても、本来の校務とは認められないから、もし何か事故があっても県教委は一切責任を負わないとでも言いたいのだろうか。

また、練習試合を「教員の自発的取り組み」と位置づけているのも大きな問題だ。確かに学校現場には授業もろくにやらずに部活動のみに命をかけるBDK(部活動大好き教員)が結構な割合で存在する。彼らの中にはマイクロバスを自費で購入し、毎週土日は自らハンドルを握って遠方まで練習試合に生徒を連れていく者もいて、全国大会で好成績を挙げると、それが美談として語られてきた。

写真AC:編集部

しかし、運動部顧問の中にはその競技に関してまったくの素人なのに、校内の事情で無理やり顧問を押しつけられる例も多い。たとえそうであっても、生徒や保護者からの突き上げは容赦ないから、大会での成績が振るわなかった場合、「勝てなかったのはあの先生のせいだ」と言われるのが嫌で、渋々、土日を潰して練習試合を組んでいるのだ。
家庭を犠牲にして、歯を食いしばりながら生徒のために行っている無償の行為を、「自発的な取り組み」の一言で切って捨てる鳥取県教委は傲慢と言うほかない。

この件についてはSNS上での反響も大きかったが、一様に処分された教員たちに同情的で、「だから部活の顧問なんか絶対に引き受けてはいけない」という声も多かった。

こんな報道がなされると、前回の記事「地域移行の前に、加熱しすぎの活動正常化で真の部活動改革を」でも述べた通り、来年度の校務分掌の決定はどこでも難航を極めるに違いない。

しかし、このニュースに接して、私が真っ先に問題だと感じたのは、引用した記事ではまったく触れられていない別の点だった。

昨年、いわゆる白バスの利用が発覚し、県立学校全校で調査を行ったとあるが、これほど多くの学校で行われていた慣習を鳥取県教員委員会がまったく認識していなかったはずがない。教員委員会にはもちろん行政職の職員もいるが、学校現場との人事交流は非常に盛んで、校長や教頭への登用に関しても、教育委員会で何らかの役職に就いていた者が下りてくるケースが多い。

だから、問題とされた件についても前々から実態を把握していたはずで、これまでずっと黙認しておきながら、突然、知らなかったふりをして処分を出したのだとしたら、当該教員にとっては詐欺に遭ったようなものだ。

これと似たケースとして、すぐに頭に浮かぶのが、2006年10月に発覚した「高等学校における単位未履修問題」である。教育委員会へ提出した教育課程とは異なる、いわゆる裏カリキュラムを採用していた全国の高校の生徒約8万人が単位不足の状態に陥り、最終的には補修やレポートによって卒業を認めるという救済措置が取られたものの、そこに至る過程では責任を感じた校長 2名が自ら命を絶っている。

あの時、現場にいた一人としての実感は、なぜマスコミは学習指導要領違反の状態をずっと黙認してきた各都道府県教育委員会の責任を厳しく問わないのか。そこが本当に疑問だった。裏カリキュラムといっても、正式に職員会議に提案され、校長の承認を得ていたわけだから、現場経験のある高校教育課長は実情を熟知していたはずだが、どこの教育委員会もすべての責任を現場に押しつけ、高みの見物を決め込んでいた。

ぜひマスコミは、今回の問題について鳥取県教育委員会に取材を行い、調査を行う前にどれくらい実態を把握していたかを明らかにしてほしい。

そして、言うまでもないことだが、もし事実上の黙認状態であったのなら、鳥取県教委は自らを過ちを認め、即刻、今回の処分を撤回すべきである。