新内閣が発足して1か月。そのスピード感は評価したいと思います。
しかし、所信表明演説を聞いても、コロナ後の社会のあり方や、どの方向にこの国を導きたいのかわかりません。
携帯電話の料金引き下げ、はんこの廃止、デジタル庁は、反対する話ではありませんが、スケールが小さいと思います。
携帯料金も、民間の株式会社が政府に言われて下げるのでは国家資本主義の中国と同じです。株主代表訴訟で負ける可能性もあります。競争政策で適正な価格にすべきです。
一方、GO TOトラベルの資金配分のトラブルやGO TOイートの制度設計のまずさなどお粗末過ぎます。
さらに、農水省の「高収益作物次期作支援交付金」は農家の不信を買っています。当初は、今年の2~4月に野菜、花き、果樹、茶を出荷ないしは廃棄した農家であれば「減収要件なし、交付上限なし」でした。この投資支援の政策が、応募締切り後に「減収した農家で、減収額を上限とする」と前代未聞の約束破りとなりました。条件を再々確認した農協関係者のお怒りはごもっともです。私の公務員、政治家の経験を通じても初めて聞く不祥事です。行政の信頼を取り戻すために、予備費を使ってでも実施すべきです。
日本学術会議の任命拒否については政府の説明が必要です。
法律の推薦基準は「優れた研究又は業績がある科学者」です。
中曽根康弘首相も「政府が行うのは形式的任命に過ぎない」と国会で答弁。
学術会議発足時の吉田茂首相の式辞でも「時々の政治的便宜のための掣肘を受けることのないよう、高度の自主性が与えられている」と明言。
仮に、首相の任命権が形式的な任命権ではないとしても、首相は任命しない理由を説明する責任があります。
「総合的、俯瞰的活動を確保する観点」で選ばれなかったという説明では、6人の方が綜合的、俯瞰的な活動のできない人だと言わんばかりです。
政府が「気に入らないから任命しない」ということでないなら、たとえば、国籍や犯罪にかかわる問題など具体的な根拠が必要です。
そうしないと、任命拒否の理由が憶測を呼び、憲法が保障する学問の自由が脅かされるおそれがあります。
昔の自民党は政府への批判は甘んじて受けるべしという懐の深さがあり、権力の行使には抑制的でした。
この臨時国会で、私たちはコロナ対応の経済対策などを具体的に提案していきますので、菅首相にも大いに論戦に応じていただきたいと思います。
編集部より:このブログは衆議院議員、岸本周平氏(和歌山1区、国民民主党)の公式ブログ、2020年10月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は、岸本氏のブログをご覧ください。