ペイパルのもたらす衝撃、仮想通貨新時代

岡本 裕明

仮想通貨の話は聞き飽きたという方もいらっしゃるかもしれません。いろいろ言われるけれど結局自分の周りにはそんな通貨は存在しないからでしょう。しかし、日本ではすでに200以上の地域通貨があり、その多くはQRコードで処理するデジタル型になっています。多くは地銀などと提携して決済をしています。

日本国内で地域通貨が200以上あるということはシステム的にはさほど難しくないともいえるのでしょう。QRコードが何か、高齢者に不親切ではないかという方も多いと思いますが別にスマホのカメラをそこに映し出す、あるいはQRコードのアプリをスマホに入れておき、それで読み取るだけであります。お財布を出すのとほぼ同じ程度の手間であります。

中央銀行、民間を問わずデジタル通貨が急速に話題になり始めたことで私は革命的変化が起きるとみています。産業革命については現在第四次にあるとされています。高度な知的活動の自動化というものでAIやIoTがその背景となります。自動車の自動運転やダイナミックプライシング、3Dプリンターもそうですしコロナで背中を押したのがAR(拡張現実)やVR(仮想現実)でしょうか?ARは例えば夜空にスマホをかざすと星座の名前が出てくるとか家具のIKEAのインテリアシュミレーションなどあります。VRはゲームを含め、今、話題の中心にあると思います。

そんな中、出そうでなかなか芽を出せなかったのがデジタル通貨であります。一つは各国中央銀行が金融の秩序を維持するため、ルールを制定しなくてはいけないと強力にその普及スピードを抑制したからです。その犠牲者がフェイスブック社が主体となっている仮想通貨、リブラであります。ザッカーバーグ氏はアメリカ公聴会に呼ばれ散々締め上げられるなど苦しい思いをしていますが、それは中央銀行の焦りでもあります。時間稼ぎをしているとしか思えなかったのです。

以前、なぜ政府や中央銀行はリブラを敵対視するのか、という話をした際にそこにユダヤがいるからだと申し上げました。基軸通貨米ドルの恩恵を最大限受けているのはユダヤが牛耳る世界であり、その覇権をやすやすと新技術に明け渡すにはいかないというのがその姿勢でした。しかし、世界各地で広がるデジタル通貨の波、そして中国がその中でもいち早く進める「デジタル元」を目のあたりにしてデジタル通貨はダムが決壊するがごとく一気に押し寄せるとみています。つまり、もう政治力でデジタル化を抑えるのは無理だろうと思うのです。

(ペイパルHPから:編集部)

(ペイパルHPから:編集部)

今回ペイパルが発表したのは仮想通貨で支払いができるというものです。日本ではペイパルは正直あまり人気がないのですが、理由はEmailアドレスをベースにしているからとされます。ただ、ペイパル自体は世界で3億5000万人のユーザーと2600万の加盟店があり世界190か国で普及している国際基準の支払いメソッドです。日本で普及しているデジタル決済は日本独自のもので国際汎用性が乏しいため、ガラパゴス化する可能性は高いとみています。

しかもペイパルは既に事業者としての条件付き許可を取得しており、数週間のうちにサービスを開始するとあります。そのため、ビットコインなどの仮想通貨相場が暴騰をしているのであります。私もペイパルでの支払いはごく普通に行っていますのでそれが仮に仮想通貨で行えるのであれば為替を考えなくてよくなります。ビットコインなども今までは「発想としての仮想通貨」でしたが「利用価値のある通貨」となれば発掘や採掘限界があるビットコインの相場は今後も折をみてもてはやされるかもしれません。ただ、個人的にはステーブル仮想通貨が主流になるのが確実でビットコインは亜流になるとみています。

この流れを受けていくつか注視しなくてはいけないことがあります。ここでは全部書けませんのでお題だけ提示します。USドルの価値の維持があります。特にコロナで財政が傷んだこと、バイデン政権ならドル売りとされる中で米ドルの威信が問題視されます。通貨当局の統制も難しくなります。税務当局も頭を悩ませるでしょう。デジタル通貨は履歴が全部残りますが、爆発的普及の前夜を控え、税務当局がどう紐づけできるのか、対応に追われると思います。中央銀行の通貨流通量の調整による経済コントロールの思想は難しくなるとみています。いわゆるマネタリストの考えは将来的に破棄せざるを得なくなるかもしれません。

通貨の保証という考えも変わるかもしれません。政府保証の通貨が良いとされる常識が壊れた時、人がなにをもって通貨とするのか、目先の物々交換の手段で個人や会社の資産をどう担保するのか、私にはもちろんすぐに答えが出ませんが、そのあたりまで入り込んで検証する必要があるでしょう。考えてみればついこの前までは金や銀が世界を結ぶものでした。その後、英国のポンドや米ドルという特定国家発行の通貨となったのですが、私はそれも終わるのだろうとみています。私は以前から通貨バスケットを提唱していましたが、結局為替のリスクは政府保証の仕組みにあるのだと考えれば政府保証の通貨の弱点であったともいえるのです。ならば世界共通のデジタル通貨をどれだけ持っているかが国家の信用基準になることも可能で発掘限界があった金(ゴールド)に変わるものになるでしょう。

考えはとても飛躍しているように見えますが、それなりに意味合いはあると思います。誰も想像できないだけだろうと思います。

ペイパルの仮想通貨決済は私は恐るべき潜在的破壊力があるとみています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年10月29日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。