野党にブーメラン「総合的・俯瞰的な視点」がない国会議員は失格

山田 肇

官邸サイト

日本学術会議会員の任命について国会での質疑が続いている。菅総理大臣が「総合的・俯瞰的」というたびに野党議員がヤジを飛ばす中継を見て、この人たちは大丈夫なのか心配になった。

リソース有限という制約下でどの政策に力を入れるかを決めるには、総合的・俯瞰的視点が必要になる。高齢者のために福祉に力を入れ過ぎたら、国家の将来を左右する教育政策や産業政策への予算が減る。若者重視で年金を減額したら高齢者の生活は維持できない。その間でどうバランスを取るか。その判断には総合的・俯瞰的視点が欠かせない。

外交・防衛についても事情は同じ。安倍外交への評価が高いのは、総合的・俯瞰的視点に立って各国との関係を構築してきたからに他ならない。

「総合的・俯瞰的が意味不明」という議員は、大所高所からの議論ができないと自ら告白しているようなものだ。支援者への利益誘導は得意だろうが、それでは国家は「経営」できない。

「経営」と「」を付けて書いたが、リアルな経営者にも総合的・俯瞰的視点が求められる。直感も大切だが、大所高所から市場を見て方針を定めなければならない。「国産飛行機を飛ばしたい」といった情緒が優先すれば経営は失敗する。

日本学術会議も同じ。人文・社会科学、生命科学、理学・工学の各分野から選定された会員も、日本の学会全体を「経営」するには総合的・俯瞰的視点が必要である。しかし、研究者というのは自らの研究分野を深堀して業績を上げてきた人たちだから、総合的・俯瞰的視点に欠けるところがある。政権はそれを指摘しただけだ。

2010年10月に、尖閣諸島での中国船の領海侵犯について当時の民主党政権の菅(かん)内閣が衆議院に答弁書を提出した。その中には、避難港の整備について「周辺海域の気象・海象条件、周辺航行船舶の避難対応の需要、船舶における安全確保策等を総合的に勘案し、慎重に検討することが必要と考えている。」とある。

2010年1月の衆議院予算委員会で、国家戦略担当の仙谷由人国務大臣は「縦割り、補助金、天下りの構造を俯瞰的な立場からどんとなくす、そういう実行力がなければならない、こういうことだと私は思います。」と発言している。

民主党政権も総合的・俯瞰的に政策判断してきたのだ!その言葉が意味不明とヤジを飛ばす国会議員は議員失格である。