「大義なき資産運用」は継続できない

長期にわたって継続できるビジネスに必要な条件は何なのでしょうか?

京セラを創業した稲盛和夫さんは、事業を始めるときにこう問いかけると言います。

「動機善なりや、私心なかりしか」

不純な動機で、私腹を肥やすことばかり考えてビジネスを立ち上げても、長期的にはうまくいかない。自分の利益だけではなく、社会への貢献や、自分以外の他人に対する価値の提供も当時に実現できるビジネスこそ、長期で続けられる王道のビジネスになるという考え方です。

これは、資産運用の世界でも同じだと思います。

私が主宰している資産設計実践会は、金融資産と実物資産を組み合わせた長期資産運用を基本とした堅実な資産運用の手法を実践するためのコミュニティです(写真は東京青山で開催したヴィンテージカーイベント)。

提唱している、金融資産への投資は、企業に資金供給を行い、資本主義社会の健全な成長に寄与する資金の提供者として、社会的な価値があると考えています。

そしてもう1つの投資対象である不動産のような実物資産への投資は、居住用物件や商業物件の賃借人に不動産というインフラを提供して、それに対する対価を受け取る事業です。豊かな住生活やビジネスの拠点を提供することによって、社会に必要な価値を提供していると思います。

社会と顧客に価値を提供する2つの資産を組み合わせるからこそ、長期で堅実に収益を得ることができるのです。

株式や為替のトレーディングのような短期取引も、マーケットに流動性を供給するという価値を提供しています。しかし、マーケット参加者として長期に生き残ることができるかといえば、答えは否だと思います。なぜなら、新しい価値を創出しているとは言えないからです。

資産運用を行う際も、自分の投資方法が「動機善なりや、私心なかりしか」という問いかけをする。しかし、それだけでは不十分です。自分自身の資産運用が持続可能かどうかという視点も必要です。2つを両立させることによって、「真っ当な資産運用」を続けることができるようになる。この基本的な考え方を常に忘れないように心がけています。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年11月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。