スウェーデンの環境保護活動家グレタ・トゥンベリーさん(17)は米大統領選では挑戦者ジョー・バイデン氏への支持を呼び掛けていた。そのグレタさんは5日、投票集計に不正があるとして「集計を止めろ」とツイートしたトランプ大統領に対し、「落ち着けドナルド、落ち着け」というメッセージを発信したというニュースが流れていた。
米誌タイムが昨年12月、「今年の人」にグレタさんを選出した時、トランプ氏は「落ち着けグレタ、落ち着け」というツイートを発信して揶揄ったことがあったが、グレタさん今回、投票集計で不満を呈したトランプ氏に同じセリフを投げかけ、揶揄ったわけだ。若いがグレタさんも大したものだ。
トランプ氏とグレタさんは世代の差が大きいが、政治的には一種のライバル関係だ。グレタさんは地球温暖化を阻止するために若者たちを動員し、地球の保護を訴えてきたことは周知の事実だ。ノーベル平和賞候補にも挙げられてきた。一方、トランプ氏は地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から脱退すると表明するなど、経済活動を規制する環境保護対策には消極的な姿勢を見せてきた。
グレタさんが昨年9月の国連気候行動サミットに招待された時、トランプ大統領とグレタさんが総会会場ですれ違ったが、その時彼女はトランプ氏に睨みつけるような視線を投じた。その瞬間を撮った写真をみた時、両者の関係が険悪であることが分かった。
トランプ氏は孫のようなグレタさんを揶揄する思いがあるのかもしれないが、グレタさんは常に真剣だから、トランプ氏の「落ち着けグレタ」という台詞に気分を害したのだろう。その恨みをグレタさんは今回、晴らしたわけだ。それ以上でもそれ以下でもない。
「グレタさんの話」はここまでにして、今回は「落ち着けグレタ」「落ち着けドナルド」に次いで、「落ち着けジョー、落ち着け」というタイトルのコラムを書きたい。
11月3日実施された米大統領選は挑戦者のジョー・バイデン氏(前副大統領)が現職ドナルド・トランプ大統領を破り第46代米国大統領に選出される見通しが強まっている。当選に必要な選挙人270人を上回り、本人は「勝利宣言」を表明した。一方、トランプ大統領は10日時点で敗北を認めず、郵便投票の不正集計などを訴え、法廷闘争に入る構えを崩していない。
バイデン氏は「勝利宣言」後、政権移譲への準備に入る一方、次期閣僚選出にも取り組んでいる。その一方、パリ協定やイラン核合意などへのカムバックの方針をメディアを通じて明らかにするなど早々に動き出している。
それに対し、ウイリアム・バー司法長官は9日、全米の連邦検察に対し大統領選の不正行為について捜査するよう促した。同氏は「不正の明確な申し立てがある場合に調査が可能だ」と指摘している。トランプ氏の「集計に不正があった」という訴えに理解を示したかたちだ。
疑いがある以上、投票集計での疑惑調査を早急に取り組むべきだ。証拠隠滅などを回避するために早急な対応が不可欠だからだ。時間が経てば経つほど真相究明が難しくなる。民主党も潔白ならば、潔く調査に協力すべきだろう。
大統領選挙での不正集計問題は米国が誇る民主主義を震撼させるものだ。それを無視して選挙人で当選に必要な数を得たという理由で早急に勝利宣言することは米国の民主主義を窮地に落とす。次期米大統領の就任式は21年1月20日。幸い、まだ時間はある。
これまで報じられてきた具体的な疑惑点としては、
①激戦州のペンシルベニア州では、共和党のトランプ大統領の陣営が派遣した選挙監視員が郵便投票の開票作業に立ち会うのを拒否された(トランプ陣営はペンシルベニア州による選挙結果の認定の差し止めを求め、連邦地裁に提訴)。
②ペンシルベニア州では15万~20万もの郵便投票が監視されずに開票された。郵便投票はいったん開票されてしまうと、不正票であるかどうか後から確認できない。
そのほか、ミシガン州デトロイトでは「選挙スタッフが有権者を指導し、民主党候補のバイデン前副大統領に投票させていた。有権者に写真付き身分証明書の提示を要求しないように指示していた」等々と証言すら聞こえてくる。
新型コロナウイルスの感染防止という名目で、今回は郵便投票が推奨され、多数の有権者が郵便投票をしたが、「郵便投票は不正の温床になる危険性がある」(ジェイソン・セイン・ノースカロライナ州下院議員)という声が大きい。郵便投票の不正防止対策に取り組むべきだ。
民主党はトランプ氏らが提示した疑惑点に対して共和党と連携して全容を解決してほしい。「不正集計で当選した米大統領」と後日、不名誉な称号を受けないためにもバイデン氏は不正疑惑解明には率先して取り組んで頂きたい。不正集権疑惑の解明なくして、バイデン氏が大統領に就任しても全ての国民の米大統領にはなれないからだ。苦労人のバイデン氏に「落ち着けジョー、落ち着け」という言葉を贈りたい。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2020年11月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。