東アジアの怪、なぜ出生率がそこまで低い?

岡本 裕明

日本の出生者数は2019年に86.5万人、特殊合計出生率は1.36となり、日本人の減少化が加速しそうな雰囲気になっています。また2020年は10月に発表された政府見通しで84万人台半ばと前年比約2万人の減少を見込んでいますが、私には甘い見積もりに見えます。というのは2018年から19年の間の落ち込みは5.6万人になっており、率にして6.0%となっています。令和元年生まれが増えるはずではとの期待は全く外れたわけです。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

今年が同じように6%も減ったら81.5万人まで減少してしまうのでそこまではないと思いますが、コロナが出生にどのような影響を与えているのか、心配な状況であります。

一方、深刻な人口減に悩んでいるのが韓国で圧倒的な世界最低の特殊合計出生率を誇ります。そのデータを見ると驚愕であります。2019年の出生率は0.92の30.3万人、しかも2020年1-6月の速報値は出生者が14.3万人、前年同期比9.9%減で推移しており、理由は知りませんが、韓国の特性で年の後半には子供が生まれにくいらしく、そうなれば20年の出生者は30万人割れどころが29万人が視野に入ってきます。

更にソウル市だけ見ると2019年の出生率はたったの0.72であります。22世紀には消滅国家として国際機関からも警告が出ていますが、警告されても政治力で子供の数が増えたら誰も苦労しません。

中国も出生率の低下に悩みます。2019年の出生者は1465万人で前年比58万人減で58年ぶりの低水準となっています。中国も都市部の出生率は農村部に比べ低く、東アジア全般に言えるのは都市化が進んだ地域、東京圏、大阪圏、ソウル、上海、香港、マカオ、更に出生率1.05の台湾など非常に頭が痛い状態が続いています。

もちろん人口減は東アジアに限ったわけではなく地球全般的な傾向であり、南欧も日本より低い出生率となっています。ご存じと思いますが、人口置き換え水準は2.1です。つまり父と母から二人生み、かつその子供が病気などでなくなる確率を踏まえると出生率は2.1以上なくてはまずいのです。そんな数字は今では全く到達不能ですがそれでもかつては一人っ子は維持してました。ところが今は「子供がなくてもいい」に変わってきています。

理由は何か、表向きは女性の社会進出や生活の不安定感、教育コスト、住宅問題など主に経済的背景を掲げていることが多いと思います。もちろんそれらは否定しませんが、それにとどまらない何かがあるような気がします。それは人生の価値観ではないかとみています。

昔は親の面倒は子供が見てくれました。儒教的精神ならば長男が面倒を見るのが当たり前で家を継ぐという習わしもごく普通でした。ところが第4次産業革命に入りつつある中、まず親の仕事を継ぐという発想が減ってきたこと、親も子供に自分の仕事を継がせようなんて思ってもいません。老後の面倒はホームヘルパーや施設があります。おひとり様用総菜もスーパーにずらり並びます。

次に戦争がなくなり、平和が当たり前になったことで「種の保存」の発想が欠落しつつあることはあります。戦争時代はたくさん産み、親としては「子の中から一人でも残ってくれれば」などという話もあったのです。

3つ目に生殖機能そもののが変質化、退化している可能性も考えられるかもしれません。特に男性の機能低下ですが、男のプライドがその検査や予防を阻んでいるようです。ただ、食生活や環境が確実に男性をむしばんでいるという研究もあり、その方面に焦点を当てる必要はあるでしょう。

4つ目に自己中心型の人生設計になったように思えます。子供よりペットがいいと思う人はいませんか?家や家系の維持という発想が極めて薄弱になっています。〇〇家という考え方を全く重視しなくなったことはあるでしょう。

欲しいと思わないと子供は産まれません。神様からの授かりものである以上、夫婦間の意見の一致ができない、更には結婚すらしない人が増えているわけですから今後、東アジア圏の人口減少は加速度を増すとみています。韓国は中期的に壊滅的状況になるはずで、20年もすると経済や社会システムに大きなクラックが入るでしょう。日本も同様です。人口減が避けられないのなら人口減を前提にした国造りを考えるしかないのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年11月15日の記事より転載させていただきました。