そのハンコは押印か捺印か。デジタル化で考える日本固有の文化

2020年11月27日 06:00

東京都議会議員の川松真一朗(墨田区選出・都議会自民党最年少)です。

maroke/iStock

こちらの記事が配信されていました。

「押印廃止」はんこに釈明 河野規制改革担当相

紙が無ければ押印できない

そもそも、ペーパレス社会を実現しようとすると、押印する紙がないわけですから脱押印になります。これまで、ペーパレス化は、役所としても霞ヶ関、地方問わず課題として挙がっており、その都度、出来るところに手をつけてきました。

でも、紙が残っているからこそ、押印も残っているのです。河野大臣のような影響力のある方が、脱押印に触れると、そもそもペーパーレス議論は飛んでしまい、ハンコばかりに注目が集まってしまった結果が上の記事に至った経緯かなと見ています。

その意味でいくと、私は行政におけるハンコレスはペーパーレスとセットであり表裏一体であると考えております。今回、菅内閣で「デジタル革命」が取り上げられている事やコロナ禍で電子決裁を増やしていく(脱FAX)などから、この流れは必至ですが、私の肌感覚ではペーパーレスにという語感に少し飽きてきた人達が新たに創り出した言葉が「ハンコレス」なのではないかと実感しています。

一方で、民間企業でも、役職者がチェックしたという意味で、判子がいくつも押されている文書は沢山あると思います。こういう、効率の悪い「認め」の押印は合理性を考えれば減らしていくのは当たり前です。コロナになって、よく「決裁の為だけ」に出社しなければいけない効率の悪さをマスコミが取り上げたりしていました。その時に、電子ハンコというものも一気に広まったわけです。

大切な視点として、ペーパーレス(デジタル化)になれば、行政的には様々なコストがなくなると言われています。
例えば、印刷コスト、移動コスト、保管コスト、時間管理コストなどなどが解消されるとされています。今の時代に、時間もお金も効率性を考えれば、こういうコストは減らしていきたいのは当たり前の話です。行政でも民間でも、書類提出という作業を考えると、営業時間外でも対応できるなどのメリットも出てきます。つまりは、全てのコストが縮小されて間違いなく様々な効率は上がります。

データ改ざんに対するアナログの利点

但し、デジタル管理のリスクとして、仮に何者かが不正侵入してデータ改ざんされる、あるいは、改ざんされても気付かないままでいる事があるかもしれません。そこでアナログが活きてくるという指摘があります。紙で、署名押印されたアナログであると、本物の判別をしやすいという声です。特に重要なものについては、やはり署名・捺印という作業が「本物」を担保するのだという視点です。それ故に、印鑑登録証明を行う事の意味があります。ハンコ職人が1本1本丹精込めて作成されているからこそ、オリジナルの印影が存在するのです。

河野大臣に力が入るように「行政のデジタル化」は近い将来か、遠い将来かは別として、絶対に避けて通れないテーマです。でも、この事は、昨日今日に始まった事ではなく、長らく議論されてきた事でもあります。菅内閣で一定の道筋をつけようという強い意思は表れているので、中央・地方関係なく進めていくのは自明です

押印と捺印

あらためて、考えるのがハンコの存在です。冒頭述べたように、ペーパーレスになればハンコレスになります。ハンコを押す機会はありませんが、裏を返せば文書の中身によっては「ペーパレスに出来ないペーパー」も存在するわけで、その場合には、ハンコが無くなるわけではないのに「脱ハンコ」「ハンコレス」などというフレーズがメディアで一方的に展開されるのには違和感があります。あくまで「脱押印」なのです。

そこで、重要な点として、記名・押印と署名・捺印の違いです。言葉を厳密に整理すれば、記名は名前があれば何でもいい、つまりゴム印でも、ワープロ文字でもよくて、押印は認印のような何でもよいのですが、署名は自著サインです。そこに、印鑑登録されている印で衝くのが捺印という違いがあります。どうも、世間は、ここを間違えている感じがあります。無駄な作業、無駄なコストを減らす為には「押印」はレスになっていくのは時代の流れだという見方は当然あるべきです。

印鑑登録は日本の文化

しかし、その議論が進んでいる今、判子を見つめなおす必要があると考えます。これは老いも若きも、大切な印鑑を持つ事が、デジタル化の中で自分達を助ける最後のポイントになるのではないかと思っています。世界的に見ても印鑑登録の制度があるのは日本、台湾、韓国であり、元をたどれば戦前の日本統治時代の名残と言われています。あとはサインなんです。サインも諸外国では登録をするものの、人の癖ですからサインが変わっていく可能性もあり、日本の実印のように、いつまでも変わらないという状況を担保できるかと言えばそうではありません。

私は今こそ、ハンコという日本古来の文化に着目し、ハンコ職人の皆様方が長い年月をかけて受け継がれてきた技の重要性を多くの方と噛み締めて、まだ、印鑑を持たれていないという方には、これを機にハンコ屋さんで、オンリーワンの1本を入手し印鑑登録して欲しいなと感じています。漢字の変化など、今、このテーマを追いかけていると先人たちが後世に残してきた智恵や重みを発見し、感じ続けています。出来れば、デジタル化一辺倒の行政改革に、何か私の出来る事はないかと考えています。

12月の都議会では、本会議場で質問に立つ予定です。この問題も触れられないかと模索中です。

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東京都議会議員(自由民主党、墨田区選出)

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