株式会社PHP研究所から『ALAが創る未来』という本を上梓しました。本日より全国書店にて発売が開始されます。
これまで私は「公益は私益につながる」という考え方のもと、「世のため、人のため」になる事業に誠心誠意取り組んできました。SBIグループのコア事業である金融サービス事業はもちろんのこと、アセットマネジメント事業においてもそうです。
21世紀の直前に、この企業グループを立ち上げたわけですが、私たちの経営理念の一つに、「新産業クリエーターを目指す」ことを掲げました。日本が得意とした「ものづくり」は、新興国へ近い将来に移行せざるを得ない状況があり、産業の大転換を迫られている時代だったからです。
日本は21世紀の成長産業であるITとバイオテクノロジー、さらには省・代替エネルギー産業といった領域に、より力を注いでいくべきだ。SBIグループによる投資も、それらの成長分野に常に注意を払っていくべきだ。そのように考え、事業を展開してきました。
そうして20年ほどの月日が経つと、日本はいつしか「課題大国」といわれるようになっていました。多くの国家的課題のなかでも、「少子化・高齢化」や「地方過疎」の問題はあらゆる方面に影響を及ぼすものになっています。
SBIグループはそのような社会変化・動向を見据えつつ、時流に先んじることによって成長を維持してきたのですが、そのなかでも、売上規模はまだ小さなものですが、私自身が特別な思いをもって始めたバイオ関連事業が本書の主題です。
バイオテクノロジーという分野は、ますます期待されるものになっているように思われます。SBIグループがバイオ関連事業に進出したのは2007年ですが、2009年には、OECDにより、2030年の世界のバイオ市場は加盟国のGDPの2.7%(約1.6兆ドル)に及ぶだろうという予測報告がなされました。その後に次々と、欧米先進国が「バイオエコノミー」に関する国家戦略を発表しました〈OECD「The Bioeconomy to 2030」。経済産業省「バイオテクノロジーが生み出す新たな潮流(平成29年2月)」による〉。
国家の戦略でもあるこの有望な成長領域にSBIグループも事業として2008年に本格的に乗り出したのです。そしてその私たちのバイオ関連事業の成否のカギを握るのが、5-アミノレブリン酸という化合物、通称「ALA(アラ)」です。
ALAは、体内のミトコンドリアでつくられるアミノ酸であり、ヘムやシトクロムと呼ばれるエネルギー産生に関与する機能分子の原料となる重要な物質で、人間を含む動物が生きていくためになくてはならない重要な働きをもつものです。研究を進めると、ALAは加齢に伴い生産量が低下すること、さらに焼酎粕や赤ワイン、高麗人参などの食品にも多く含まれることがわかってきたほか、植物の葉緑素の原料としても知られるようになってきました。私たちは、このALAを活用して健康や医療、農業などに貢献していこうとしています。
2013年には、術中診断薬「アラグリオ」を上市しました。ALAを用いた機能性表示食品としては、「アラプラス 糖ダウン」や「アラプラス 深い眠り」といった商品も上市しております。他には、運動機能、認知といったものを改善・サポートするALA配合の機能性表示食品や健康食品なども発売しており、ドラッグストアなどでの取り扱いも順調に拡大しています。
そうした事業も含むバイオ関連事業を、SBIグループでは成長分野の一つと位置づけ、長期的視野に立ってグローバル展開を推し進めており、その中心となるSBIアラファーマという会社では、社長として自ら事業の育成にあたっています。
このALA事業を展開するなかで、多くの優れた研究者や医師の方々にお会いしました。なかでも、特に縁の深い方々、これまで「ALA」の価値に惹かれ、それぞれの仕事のなかで重要な位置づけをされている方々に集結してもらい、「ALAの未来を考える会」という特別プロジェクトを、本書刊行のために結成、それぞれ寄稿いただくことになりました。
参加いただいた執筆メンバーの方々には、それぞれの専門分野から最先端の事情をふまえたうえで、一般読者向けのいわば「誌上セミナー」としてわかりやすく講義をしてもらっています。「ALA」がどのような価値をもち、可能性を秘めているのかについての知識をこの機会を通じて得ていただいて、皆さんの平生の生活に活かしてもらえたらと思っています。
編集部より:この記事は、北尾吉孝氏のブログ「北尾吉孝日記」2020年11月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。