Youtuberが宣伝!?「歯の脱色」ではないホワイトニング拡大を懸念

歯のホワイトニングをめぐって、モラルハザードが起きつつあります。

一般的にホワイトニングとは、化学物質による歯の漂白によって本来の状態以上に白くすることを示します。しかし近年流行している歯科医師不在のホワイトニングエステや、薬液の販売のみのセルフホワイトニングにおいて、ホワイトニングの意味を拡大解釈した巧妙な宣伝広告が増えてきました。

これらの歯科医師不在で行われるホワイトニング、たとえばポリリン酸や、酸化チタンに対するLED光照射というのは、着色物質の分解のみの効果となります。確かに歯の漂白よりもダメージは少なく、ホワイトニングの広義の意味に含まれる行為ということもできます。

しかし着色物質の除去による「本来の歯の色を取り戻す」処置であれば歯科医院での歯のクリーニングで同じ効果を得ることができ、その場合1で完了し、保険外治療としても5000円以下が相場です。

一方で最近積極的な広告をしているセルフホワイトニング商品では、同様の効果を得るために必要な期間は2~4ヶ月で、7万円の費用がかかります。

(参考)歯科医考案!日本初業態のセルフ式デンタル美容サロン ― SankeiBiz(2020年7月30日)

この価格は歯科医院でのホワイトニングを意識しています。確かに20年ほど前は10万円程度が相場で、それと比較すると安価であると広告されることが多いです。

しかし簡易化と普及による一般化が進み、今は歯科医院でも概ね数万円程度で提供しています。歯科医院で「本来の歯以上に白くなる」狭義のホワイトニングを受けるほうが、むしろ安いかもしれません。

歯の漂白が可能な薬剤は過酸化水素あるいは過酸化尿素のみで、これらは薬機法にて医療機器か医薬品に該当し、歯科医師の監督下のみで使用することができます。

(参考)ホワイトニング ― テーマパーク8020(日本歯科医師会)

(参考)過酸化物を用いた歯面漂白材の取扱いについて ― 東京都福祉保健局(2002年2月6日)

つまり歯科医師不在でのホワイトニングエステやセルフホワイトニングは、一般的に歯科医院で提供しているものと全くの別物ということができます。「ホワイトニング」の言葉の意味・施術法・効果をまぜこぜにすることで、安く見えるようでかえって割高な商品なのかもしれません。

このようなことを防止するためには、他の多くの薬剤で行われているとおり、薬機法によって薬剤と効果の表記を関連付け、過酸化水素あるいは過酸化尿素のみが「ホワイトニングもしくはブリーチング」を告知することが可能、と整理すれば解決します。

日本歯科医師会には歯科系議員と連携して迅速な対応をお願いしたいと思います。

もう一つの懸念が、このセルフホワイトニングの広告に有名Youtuberが関与していることです。

医療職ではないYoutuberが薬理効果や薬機法等に詳しくないだろうことは明らかなので、本人に悪気が無いものだろうとは思います。一方でその影響力や誘引効果はいまや絶大なものであるため、今後の発信や紹介に関して十分な注意を払っていただきたいと存じます。

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(謝辞)本記事は歯科医師Youtuber ものくろマスク氏と論点整理した上で、著者の責任において執筆しました。