“世田谷モデル”は、とりあえず1月まで

稗島 進

世田谷区議会は第4回定例会の真っ最中だが、先週、3日かけて各会派の代表質問と各議員による一般質問が終わった。

世田谷区議会ネット中継より

私は「世田谷区の自治権拡充と政令市化について」と「いわゆる“世田谷モデル”の実施状況について」と題して、大きく2つ質問した。前者の自治権拡充については次号に譲り(大阪都構想に反対していた保坂区長との論戦は、これはこれで興味深かった)、今回は後者の“世田谷モデル”の質問について書きたい(質問の様子はネット録画で見られます。0:18:40くらいから)。

ここ2週間あまり、コロナの感染者数が急増しており、鳴り物入りで実施した“世田谷モデル”は、その対策として有効なのかどうか。

私は一貫して疑いの目を向けており、議会でも反対してきた。その理由はいくつもあるが、大きなものとして、この検査は基本的に「月1回の検査を3ヵ月間行う」というもので、こんな間延びした検査はほとんど無意味である、ということは、多くの専門家が指摘している。

そこで私は、もう実施してしまったのだから、やるなら民間の検査キットなどを導入し、検査数を飛躍的に増やすよう提案した。

現行検査の仕方は、専門家の眼前で前鼻腔拭いか唾液によって検体を採取しているので、時間がかかっている。保坂区長が主張するプール方式は、検体採取後の処理方法のことで、4つの検体を1本の試験官で判定できるので、国に認められれば大量に処理できるというもの。

いわば区長は、出口部分の処理数を増やそうとしているのだが、私が言う入口部分の採取も増やさなければ不完全ではないか、と提起したわけである。つまり、工場に高性能なマシーンを設置しても、原料が少なければ、製造量は増えないということである。

これについて区長は、販売されている検査キットの精度に問題がある点を指摘し、導入は困難であるものの、感染者の激増を鑑みて検証していく、と答弁したので、ぜひとも様々な可能性を探って頂きたい。短期間の検査回数を増やすことはマストである。

と同時に指摘したのは、7月末の時点で区長がぶち上げていた「誰でもいつでも何度でも」の対象には、飲食店やスポーツジムなども入っていたので、今こそ、これらにも拡大すべきであるということだったが、はかばかしい答弁はなく、介護事業所などのエッセンシャルワーカーの検査で手一杯ということらしい。

だいたい、辻褄合わせで対象者を縮小したのだから、自ずと限界を孕んではいる。とはいえ、区は小中学校の職員は新たに加えたので、順序が違っているのではないか。それに、教育現場での陽性者のプライバシー保護は、情報拡散のスピードが速いので、かなり気をつけなければならないことも、強く言っておいた。

Feodora Chiosea/iStock

問題はまだある。有症状者の検査は保健所や医師会が行っており、こちらの陽性者は増えている。“世田谷モデル”は無症状者に実施しているので、これはこれで陽性者が出ている。

目下、病院やホテルなどの収容先はひっ迫しつつあるので、有症状の若者と無症状の高齢者を選択しなければならなくなった場合、どちらを優先するのだろうか。

これについては、原則として65歳以上の高齢者や基礎疾患がある人は入院となると答弁。都が用意できている病床数は3000。ホテルなどは9ヵ所確保しているらしいが、当然、陽性者は世田谷区だけにいるわけではない。23区だけでなく、市部からも収容要請が出されるわけだから、混乱は必至だろう。むやみやたらと無症状の陽性者を掘り返す意味が本当にあるのだろうか、甚だ疑問である。

こういうと、「意味はある!」と言う向きもあるだろうが、要は“世田谷モデル”じたいの検証が必要だということである。この点を私が質し、区が答えたのをまとめると以下の通りである。①“世田谷モデル”の実施期間は来年1月まで。②検証作業としては、現在の実施状況を整理・分析し、12月中旬を目途に議会に報告する。③これを踏まえて、2月以降の実施を考える。

要はとりあえず、“世田谷モデル”は来年1月までがメドになっており、その先は未定ということである。これも質問したが、陽性者が出て閉鎖になる介護施設などへの人的・経済的支援については、またぞろ国を当てにしているので、きわめて心もとない財政見通しの中で、見切り発車されている。

この他にも“世田谷モデル”の問題点はいろいろあるが、区の検証報告なるものが提出された時点で、私も独自に検証作業を行い、皆さまに報告したい。