新型コロナの感染者数が落ち着いたと思ったら、死者が増えてきた。死亡は感染から2週間ぐらい遅れるので、これは予想されたことだが、1日として最大の12月1日でも41人。あなたがコロナで死ぬリスクはインフルエンザより大きいだろうか?
今年のインフル患者は、11月からの今シーズンの累計で150人程度だが、コロナ系の風邪がはやる年はインフルがはやらないという経験則がある。次の図は国立感染症研究所が2017年以降のインフルの推定受診者数を週ごとに集計したものだが、今シーズン(2019/20)の推定受診者数は、昨年の第52週をピークにして、コロナがはやり始めた今年初めから急に減っている。これはコロナウイルスとの干渉だといわれる。
最近では2018/19年のシーズンが大流行といわれたが、この年の患者(推定受診者)は1200万人。ピークだった第4週には223万人、1日平均32万人が感染したことになる。これだけで今年のコロナ陽性者数の累計約15万人の2倍以上だ。
これは定点観測している病院に来た「患者」からの推定なので、実測ベースのコロナ陽性者数より多いかもしれないが、無症状も含めた「インフル感染者」はもっと多いはずだ。したがってざっくりインフルに感染するリスクはコロナの80倍と考えていいだろう。
日本は「マイナスリスク社会」になる
問題は死亡リスクである。インフルの致死率は0.1%といわれるので、2018年のシーズンでは1万2000人がインフルで死亡したと推定される。これに対してコロナの死者は累計で2170人だが、致死率は1.5%。コロナはインフルより恐い(肺炎になりやすい)病気だが、感染力は弱いので、コロナの死亡リスクはインフルの1/6程度である。
ただコロナの死者は死亡診断書でPCR陽性だった人をすべて含むので、インフルと厳密に比較するのは困難だ。コロナが流行したために社会全体で何人死者が増えたかという「超過死亡」でみると、2018/19年シーズンのインフルによる超過死亡は3276人と推定されるが、今年の超過死亡は平年より減っている。
上の図は国立感染症研究所が2017年からの死者数(週ごと)を平年と比較したものだ。昨年の死者数は平年を上回ったが、今年は平年を下回っている。このうち何人がコロナによるものかは分析していないが、超過死亡が減った最大の原因はインフルの死者が減ったことだろうと感染研は推定している。
他の感染症も減っている。次の図は感染性胃腸炎(ノロウイルスなど)の患者数だが、今年は平年よりはるかに少ない。政府が自粛で接触を減らしたためだろう。
昨年の(すべての死因による)死者数は約139万人だったが、今年上半期は約69万人で、昨年より約1万人少ない。同じ傾向が続けば、今年の死者は昨年より約3万人減るというのが感染研の見通しだ。これは高齢化で死者の増え続ける日本では異例である。
今後も政府が旅行や外食を禁止すれば日本の死者は毎年減り、ゼロリスクどころかマイナスリスク社会になるだろう。コロナで20万人も超過死亡が出たアメリカに比べれば日本のコロナ被害は無に等しいので、今の対策は過剰なのだ。そろそろ政府も、感染症対策の最適水準を考えてはどうだろうか。人間は感染症にかからないために生きているわけではないのだから。
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