宝くじは、不幸を呼ぶ「貧乏くじ」

内藤 忍

2年前のブログにも書きましたが、師走になると数寄屋橋にある宝くじ売り場に長蛇の列ができます。年末ジャンボ宝くじを買い求める人たちです。この日は「1粒万倍日」という特別な日らしく、いつもより更に行列が長かったようです(写真)。

宝くじを買うのは、競馬やカジノより更に割に合いません。期待値は45%程度です。

宝くじを1000円買ったら、まず550円を差し引かれて、残りの450円を購入した人の中で再配分していることになります。購入した人が払った金額の半分以上は、宣伝費や地方自治体への交付金として使われます。半分以上が取られる「ほぼ確実に損をする商品」ですから「宝くじ」ではなく「貧乏くじ」なのです。

宝くじを含めたこれらのギャンブルというのは、胴元だけが儲かって、参加者は全体では損をする仕組みです。集めたお金から、コストや利益を引いて、残りを配分するのですから、新しい価値が生まれません。

ギャンブルと資産運用の一番大きな違いは、資産運用は新しい価値が生みだされていくことです。投資された資金は経済活動を通じて、資本主義の成長に使われ、全体の富が増えていきます。価値が増大することで、全ての人がプラスになることも可能なのです。

冷静に考えてみれば、宝くじよりも、株式インデックスファンドをNISAの積立で買った方が、資産が増える可能性は圧倒的に高いのは明らかです。

資産運用でも損をする人はたくさんいますが、それはやり方を間違えているからです。確率的に考え、有利な方法を長期的続けていけば、資産運用の成果は必ず実現します。

宝くじは人を幸せにするのではなく、不幸を呼ぶ「貧乏くじ」。これは寒い中、コロナ感染リスクを冒してまで何時間も並んで宝くじを手に入れようとする人たちに説明しても理解してもらえないかもしれません。もしかしたら、自分が高額当選者になって、一発逆転できるかもしれないと錯覚して奇跡を信じているからです。夢を求めて購入するのはその人の自由ですが、仕組みを理解してから判断をしても遅くはないと思います。

宝くじの不都合な真実を知っているのは、このブログの読者のような人たちだけ。お金の知識(マネーリテラシー)が無いことは、本当に恐ろしいことです。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年12月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。