米国も死刑廃止へ:日本で存続なら国益は守れない

八幡 和郎

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バイデン次期政権が死刑廃止に取り組むとしていることと関連して、日本の孤立が決定的になる前に死刑廃止へ向かうべきだと書いたら、たくさんの人から反対意見をいただいた。

そこで、私の死刑についての意見を少し書いておく。私は信条として死刑に賛成とか賛成でないとかいう以前に実利的な現実問題として日本は死刑を廃止するべきだと思っている。

しかし、思想的にはどうかといわれれば、好ましくないが、それで犯罪が確実に減るのならば、全面否定するべきでないと思う。

もうひとつ、その代わりになるべき、終身刑というのが脱獄を防ぐことも含めて、恐ろしく高コストであり、国によっては、現実的でないことも考慮する必要があると思う。

それでは、思想を離れて、現実的にはどうかといえば、私が反対してる第一の理由は死刑が悪いことだという確固たる価値観が世界的に確立しつつあるときに、世界から侮蔑され非難されながら死刑を続けることは弊害が大きすぎるということだ。

そもそも、人権に関してはその国に極めて特殊な事情がない限り国際的な常識を尊重すべきだと考える。なぜ、第一に尊重すべきかと言えば共通化することが人権をよりよく擁護できること、第二にそれに反することが世界における評価を落とすことの2点である。

中国とか韓国とか北朝鮮に国際的な常識を尊重しろと言って圧力をかけているわけであるが、死刑について、日本の方が執行停止している韓国より国際常識に反することをやっているのではデメリットは極めて大きい。

とくにアメリカ以外の先進諸国では死刑があるかないかは文明国かどうかを計る極めて重要なバロメーターと見做されており、人権について、韓国は自分たちの側の国、日本は中国や北朝鮮の同類とみなされかねないほど深刻である。

死刑存続論者がよく言うのは、被害者感情を満たせということだが、刑法理論における刑罰の本質は応報ないし教育であって、被害者感情にこたえるというのは、おまけ程度の意味しかないのでそれを持ち出して死刑存続などと言っても国際的理解を得ることは不可能である。

被害者心情をいうなら、ハンムラビ法典の目には目をの世界になるし、死刑とかむち打ちとか刑の執行を被害者やその家族にさせるべきだとなりかねない。

犯罪抑止効果については、たとえば、死刑をなくしたら殺人が目立って増えたなど聞いたことがない。

なお、私は、死刑の問題だけでなく、ほかの犯罪も含めて犯罪防止のためにも、効果的な取り締まりや刑罰がなにかを日本は根本的に考え直すべきだと思う。たとえば、性犯罪などは、GPSの取り付け、さらに一時的な去勢といわれる性欲抑制のための薬物投与、周辺住民への情報提供などのほうが、死刑や懲役よりよほど効果的だと思う。

 

それから、欧米では犯罪者を射殺することが多いので死刑が少なくても意味ないという指摘があったが、犯罪者射殺は緊急避難という正当化が可能だが、死刑は緊急避難性がないので、死刑容認の理由にならない。

参考:アメリカは州レベルでは死刑執行は続いているが、昨年は22件の死刑が執行されたものの、件数は減少傾向にある。死刑を廃止する州は増えている。大多数の州は正式に死刑を禁止しているか、10年以上死刑執行を停止している。

世論も死刑を支持しなくなっている。昨年のギャラップ社の世論調査では、米国民の6割が死刑より終身刑を支持した。終身刑の支持が上回ったのは、この世論調査が30年以上前に始まってから初めてのことだった。

「死刑への支持は過去数十年で最低となっている」と、「死刑情報センター」のンデュリュ氏は話した。(BBCより)