「2020年の冬はラニーニャ現象が発生している」というニュースを耳にしたことはありませんか? ラニーニャという言葉はあまり聞き覚えがないかもしれませんが、いったいどんなものなのでしょうか。
ラニーニャ現象を知らなくても、エルニーニョ現象という言葉を耳にしたことのある人はいると思います。
エルニーニョ現象とは、太平洋の東側の赤道付近(南米のペルー沖付近)の海面水温が平年よりも高くなり、それが1年ほど近く続く現象のことをいいます。エルニーニョ現象が起こると、世界中で異常気象となり、日本付近では冬が暖冬になり、夏は冷夏になりやすくなります。
では、ラニーニャは何なのかというと、エルニーニョとは逆の現象です。
つまり、南米ペルー沖付近の海面水温が平年よりも低くなり、それによってやはり異常気象が起こりやすくなるということです。
ラニーニャ現象が起こると日本付近では冬型の気圧配置が強まって、厳しい冬の寒さになりやすい傾向にあります。
ちなみに、エルニーニョとはスペイン語で「神の子」、ラニーニャは「女の子」という意味です。
さて、海面が平年よりも高い/低いという現象はなぜ起こるのでしょうか。平常時、エルニーニョ現象時、ラニーニャ現象時の海と大気の様子を比べてみると、このような図になります。
赤道付近は、普段から貿易風と呼ばれる東風が吹いています。それに伴い、海面付近の温かい海水も、西方向に吹き寄せられています。そして、太平洋の東海岸は深海からの冷たい水が海面に向かって湧き上がっています。
ところが、数年に1度くらいの頻度でその貿易風が弱まることがあります。すると、温かい海水は太平洋の東海岸にとどまることになります。だから、この海域の海面水温が平年より上がるのです。これがエルニーニョ現象です。逆に、貿易風が平年よりも強いと、海面付近の温かい水が平年よりも西に吹き寄せられてしまうので、普段よりも深海の冷たい海水が上がってきやすくなり、太平洋の東海岸の海面水温が平年よりも低くなります。
高い海面水温の場所では、上昇気流が発生して雲ができやすくなります。上昇気流の発生する場所の隣では、上昇した空気が下降するので今度は雲ができにくくなります。このように、温かい海水の位置が違うと、雲のできやすい場所と雲のできにくい場所がずれるので、遠く離れた日本の天候にも影響が出てしまうのです。
ちなみに、エルニーニョ現象やラニーニャ現象は、数年おきに自然に発生して繰り返されてきた現象です。とはいえ、世界中で異常気象を発生させるため、気象庁では普段から常に太平洋の特定の海域で常に観測を行い、現在エルニーニョ現象やラニーニャ現象が起こっているかどうかを監視しています。そして1か月に1回、エルニーニョ監視速報という形で発表しているのです。
12/10に発表されたエルニーニョ監視速報では、冬の間はラニーニャ現象が続く可能性が高いとのことでした。もしかしたら、今週の冷え込みや日本海側の大雪も、ラニーニャ現象がある程度影響しているのかもしれません。
ただ、ラニーニャ現象だから必ず寒い冬になるかというと、そうではありません。厳冬か暖冬かを決める要素はほかにもあり、それらの要素が複雑に絡み合って決まるからです。
11月25日発表の気象庁の三か月予報では、気温は北日本は平年並みか高く、ほかの地方ではほぼ平年並みとなっています。3か月予報は毎月25日に更新されるので、冬が寒くなりそうかは引き続きチェックしていく必要がありそうです。