今年2月に新型コロナ感染が始まって以降、想定外のことが多発してきたこの世の中だが、それにしても、これだけ「唖然とするような出来事」が連続的に起こるとは、思わなかった。
先週土曜日に、ニコニコ生放送のネット番組に出演した菅義偉首相は、「ガースーです」と、コロナ感染拡大、医療崩壊の危険が報じられて、全国民に危機感が拡がりつつある状況に凡そ相応しくない、あまりにクダラナイ、冗談めいた挨拶をした後、分科会がGo To停止を求めていることについて聞かれて「それは考えていない」と明言した。
しかし、その2日後の今週月曜日、「年末年始の期間、全国で一斉にGo To停止」を突然発表。国交省等関係官庁、旅行・観光業界の関係者や政府内部が大混乱に陥っていた最中に、二階幹事長ら自民党幹部、福岡ソフトバンクホークスの王貞治会長、俳優の杉良太郎氏などと開いた「8人の忘年会」に参加していたのとのことだ。
12月に入って感染が急拡大しても、「Go Toはコロナ感染の原因になっていない」と強弁し続けていたが、その理由は、「Go Toによる感染者が200名余りしかいない」という話で、そんな旅行業者等からの自主申告の数字でGo Toと感染との因果関係などわかるわけもないことは、あまりに当然で、議論の余地すらない。
そういう子供じみた言い訳までして、Go Toに固執していた菅首相が、突然「Go To全国一斉停止」を言い出した原因が、週末の世論調査での内閣支持率の急落にあることは誰の目にも明らかだ。要するに、感染拡大がどうなろうとGo Toは維持したいが、政権がもたなくなるのは絶対に嫌だということで、前言を、あっと言う間にひっくり返したのだ。
そして、その態度の急変に、国民が呆れ果てているところに、8人という大人数での会食。「感染対策は、国民がやるもので、我々政権の中枢にいる権力者は関係ない」ということなのだろうか。
こんなような菅首相の行動に対して、与党公明党からも苦言が呈され、多くの国民は呆れ果てている。
政府のトップ首相がこういう馬鹿げたことをやっている状況で、国民は、まともに感染対策を取り組むことなどできるだろうか。精神的にも体力的にもギリギリの状態で、急増するコロナ患者の医療に当たっている医療関係者は、気力を維持できるだろうか。
重大な問題は、菅首相の権力基盤である二階幹事長との関係が影響しているのか、Go Toトラベルの実施に関して、頑なな態度を取り続け、それを急転直下変更して困難を招いている菅首相の下で、感染対策と経済の両立という面で適切な対応がとれないのではないかということだ。
今、絶対不可欠なことは、
(1)コロナ禍において地方の事業者を救済する措置として、Go Toが本当に唯一の手段なのか(事業者に対する給付金の支給に切り替えるべきではないか)の検討
(2)Go Toなどの「人の移動拡大措置」が、感染拡大に与える影響の客観的分析(旅行による体調の変化の全体的把握)を行った上で、Go Toの実施と停止の客観的な基準を明確化する
(3)国民の多くが、開催を疑問視している東京五輪について、どの時点で、どのような状況になったら開催の断念を決断するのかの判断基準の明確化
などだが、少なくとも、これらは、Go Toと東京五輪開催に異常にこだわった菅政権の下では行い得なかった。
このような当然検討すべきことを検討した上で適切な政策を実行していくことは、菅内閣のままでは困難だ。
そもそも、このような菅政権を誕生させたのが、今年9月の自民党総裁選であり、そこで、菅氏は、圧倒的多数の支持を集め、一方で、徹底して排除されたのが、安倍政権に批判的な立場を貫いてきた石破茂氏だ。そこで誕生した菅政権が、現在のような惨憺たる状況に陥っているという現実に、自民党議員全員が向き合うべきだ。
少なくとも、今の国会の勢力分野のままで、野党中心の政権はあり得ない。また、このようなコロナ禍で解散総選挙をやることも考えにくい。とてもできない。
国会で多数を占める自民党の国会議員一人ひとりが、責任をもってこの危機的な状況に立ち向かえる政権の在り方を考えるべきだ。
この国を、ここまでダメにしてきたのは、安倍政権と、それを継承した菅政権だ。心ある自民党議員が集まって、緊急の政策の検討を行うとともに、それを実現できない菅首相の退陣を求め、今の政権をリセットして、国民の信頼を得て現在の困難な状況に立ち向かうことができる「救国内閣」を作るしかないのではないか。