河野大臣が、25日の記者会見で、国家公務員の10、11月の正規勤務時間外の「在庁時間調査」結果を発表しました。
20代総合職の約30%が過労死ラインの目安とされる月80時間を超え、100時間超えも6人に1人となっています。
報道の元になる情報にアクセスするのがとても大事なので、ここに内閣人事局の発表資料(元ネタ)を貼っておきます。
在庁時間調査 取りまとめ結果 2020年12月 内閣官房内閣人事局
私自身も昨年まで長く霞が関で働いてきて、今霞が関の働き方改革の活動をしていますが、そもそもの問題の背景を説明しておきたいと思います。
以下の資料をご覧ください。
図に示したように、霞が関では近年急速に若手の離職や採用難が深刻化しています。また、体を壊す職員も増えています。
霞が関の官僚たちは、かなり深夜・休日対応を強いられているのですが、その実態が今まで明らかになっていませんでした。
政府(人事院)が公式に発表している国家公務員の残業時間の平均は年間350時間(概ね月30時間程度)ですが、これは実態を反映していない数字でした。
残業代が予算で確保している範囲でしか支払われないので、予算の分を超える残業はなかったことにされているので、公式発表は実際の労働時間よりも相当短くなっています。要するにサービス残業が常態化しているけど、認めるわけないはいかないので建前の数字を公表しているということです。
河野大臣は、これにメスを入れるべく「在庁時間(就業時間を超えて職場にいた時間)」を各省に調査して提出させました。
※ 最近はテレワーク環境が整っているので持ち帰り残業をしているケースも増えているので、その分はこの調査に入っていないだろうと思います。
建前で隠されていた実態を明らかにしていくことは大変重要です。
今回は調査結果の公表にとどまっていますが、実態が明らかになったからには、サービス残業をどう是正していくか、過労死ラインを超えるような長時間労働の職員がかなりの割合いることをどう是正していくのか、今後どのような改革を実施していくのかが非常に注目されます。
僕自身は、著書「ブラック霞が関」で詳細に書いていますが、少なくとも、健康と家庭を守れる働き方にし、さらに、余裕を持って現場を見たり政策を考える時間を確保することにより、霞が関が本当に国民のために働けるようにしていくことが急務と考えています。
そうしないと、難題が山積している中で、よい政策も作れず、また行政運営もミスが多発するようになり、生活者みんなが困ることを危惧しています。
改革を実現するためには、政府内の組織マネジメントはもちろん重要ですが、人員の問題やシステムや外注などお金がかけないといけないこともあります、深夜残業の温床となっている国会の運営見直しも必要不可欠です。
霞が関も頑張って改革しないといけませんが、多くの国民の方の理解がないと進められない構造なので、多くの方に関心を持っていただければ幸いです。
官僚たちは長時間労働の中でどんなことをしているのか、なぜブラックな状態は変わらないのか、そもそも官僚の仕事とは何なのか、政策のつくり方はどう変わってきたのか、必要な霞が関の改革と国会改革は何か、著書「ブラック霞が関」では、そういったことをできるだけ分かりやすく書きました。
詳しく知りたい方は、お読みいただけますと幸いです。
編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2020年12月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。