雇用維持にリミットにらむ年末…コロナ特例の延長を!

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日本各地が観光客で大賑わいとなった9月のシルバーウイークの頃、テレビニュースで流れる映像を見ていた自分は、思わず「やはり今秋・冬にコロナ第3波は来ないのかも知れないな」などと呟いていた。

どこかで拾い読みしたニュース記事に「日本人はすでに新型コロナウイルスを克服した。すでに集団免疫を獲得しているから、第3波は来ない」という感染症・免疫の専門家の意見が載っていたのを思い出していたからだ。しかし、残念ながら、その予想は大きく外れ、連日、感染者数の記録更新が続く毎日となっている。

私の地元・栃木でも、医療・介護施設などでクラスターが発生し、顧問先の社員にも罹患者が出るなど、“コロナの脅威”が身近に迫っているという危機感は日々、高まっている。自分も含め、もし仮に弊社のスタッフが1人でも罹患してしまえば、隣席との距離が1mも離れていない小さな事務所内は全員が濃厚接触と認定されかねない。そうなれば社会保険労務士の業務機能が麻痺してしまう可能性はかなり高い。

しかし、総勢6名程度の零細企業にとって、高額な業務用ソフトを追加購入してリモートワークを行うだけの余裕はない。また言い訳がましいが、コワーキングスペースも充分に整備されていない地方都市では、なかなか思うような対策が取れないのである。これがリアルな実情だ。

雇用維持装置たる「雇用調整助成金」

幸運なことに、これまで罹患者を出すことなく、こんな小さな事務所であっても今年4月から12月までの期間に約60社、延べ160ケ月分以上の雇用調整助成金(雇用保険の被保険者が対象)や緊急雇用安定助成金(雇用保険の未加入者が対象)などの申請支援を行うことが出来た。

全国的には雇用調整助成金だけでも、延べ215万件、2兆4千億円の支給(2020年12月24日時点)が行われているようだが、これが正規雇用労働者やパートタイム労働者などの雇用形態に関わらず、雇用の維持に相当の貢献をしていることは、何も統計の数字など見ずとも現場の肌感覚として実感している。

労働力調査(基本集計) 2020年(令和2年)10月分結果 <厚生労働省>

先日、厚生労働省が発表した2020年10月の労働力調査によれば、就業者数は7ケ月連続の減少、失業率は9月連続の増加となったようだが、その程度で踏みとどまっているのは、やはり雇用調整助成金などの支援策が一定の効果を上げていることは間違いないだろう。しかし、その雇用維持装置が年明けにも姿を変えるかも知れない。

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「コロナ特例」は2021年2月末まで

通常時の雇用調整助成金は、事業規模に応じて助成率が2/3~1/2、対象労働者1人あたりの日額上限が8,370円となっているが、コロナ特例として数次の見直しを経て、労働者を解雇していないなどの一定の条件下に該当すれば、最大で10/10の助成率、日額上限も15,000円まで引き上げられている、このほか休業計画の作成が不要であったり、利用限度日数も通常時とは別枠で設定されるなど、かなり手厚い特例措置が取られている。

前述した雇用保険に加入できない労働者を対象とした緊急雇用安定助成金も同様だ。つまり解雇をしていない中小企業の事業主が給与の全額補償を行っている場合、その企業の労働者は雇用保険に加入していようといまいと、これまで通りの給与を減額されることなく受けることが出来ているのである。

また、休業手当を支給されない労働者(話が長くなるので簡単にまとめると…労働者本人のコロナ感染ほか、“事業の休止”によって従業員を休ませた場合、不可抗力による休業であれば『使用者の責に帰すべき事由による休業』にはあたらず、企業側に休業手当の支払い義務はなくなる)の救済策として、「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」が用意されている。こちらは直接労働者が申請を行う形式となっていて、平均賃金の8割の支給を受けることが出来るようになっている。

いずれも特例であり、かなり手厚い内容だが、この特例期間の再延長は2021年2月末でリミットを迎える。国の会計年度末となるの3月末ではなく、わざわさ2月末という区切りをしてくるあたり、何か深遠な意図があるのかと勘ぐってみたが、GoToトラベルの一斉中止などを見ていると、本当に現状を把握して熟慮した結果を政策に反映させているようには思えない。

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財務省からの財政規律の圧が強まっているのかとも勘ぐるが、それでも今年の雇用調整助成金の累計は約2兆4千億円であり、2次補正で積まれた予備費の1/4程度だ。

このコロナ特例措置が外れれば一気に失業者が増えることは火を見るよりも明らかだ。多くの識者が指摘されている通り、コロナ感染による死者数よりも経済的理由から命を絶つ死者数のほうが多くなってしまうことを危惧している。

心健やかな新年を迎えるために…

長引く飲食業界への時短要請やGoToトラベル中止による観光業への打撃なども経済を疲弊させており、弊社の顧問先でも既に青色吐息の域を超え、事業存続の瀬戸際に追い込まれている経営者が現実に出てきている。雇用維持だけで経営が支えられる訳ではなく、また医療体制の維持への支援との両天秤の難しい判断が迫られるのは理解できるが、今は平時では無い。

いまだ1週間に約5万件程度の雇用調整助成金の申請が続いている。これを運用しながら現状を確認・分析して、助成金利用率の低下が顕著になった段階で縮小を図る検討すれば良いのではないだろうか。

小出しの対策でなく、この特別な年の瀬に菅総理が「令和3年度いっぱいは特例措置を維持する」という大きな方針を掲げ、新年に向けた雇用維持の安心感を打ち出して欲しいと切に願っている。