1月5日に投開票されたアメリカ ジョージア州の上院2議席を巡るやり直し選挙が大統領選挙並みに注目されたのはブルーウェイブと称する民主党のトリプル勝利(大統領、下院、上院)が起きるのかどうかの瀬戸際であったからでしょう。そしてそれは起きてしまいました。
大統領選出については1月6日に選挙人の投票結果を承認する手続きで、方々手を尽くしたトランプ大統領ももう厳しいかと思います。下院は民主党が過半を取ることで確定済みです。一方、上院についてはジョージア州2議席のやり直し選挙で運命を左右する状態となっていました。上院は議席数100で昨日時点で確定していたのが民主党48、共和党50ですので仮に民主党がこの2議席を取れば50:50になったわけです。
だだし、本稿を書いている時点で大統領選出の選挙人投票結果の承認はデモ隊が議会を襲撃したため、中断しています。いつ再開されるかは未定です。
上院議会判断は同票で割れた場合、最終採決は副大統領が行うことになっているため、カラマ ハリス氏が就任すれば民主党側に最後の一票が入り、ブルーウェイブが成立することになります。(あくまでも理論上で時として造反がありますから絶対的とは言えないと思います。)
ジョージア州はそもそも共和党の基盤であり、改選対象の現職議員は両方とも共和党。そして11月時点では共和党が有利でまさかそこまでは逆転されないだろうとみられていました。ところがじわじわと民主党候補が追い上げ、この1週間ぐらいは民主党候補が0.5-1%ポイント程度リードする展開となっており、ひょっとすると逆転があり得るかもしれないとみられていました。
ただ、ともにrazor thinの差(カミソリの刃ぐらいの差)と称され、投票直後の開票の行方も50:50がずっと続くきわどい戦いとなっていました。これがともに民主党に議席が転がり込む結果になり、様々なアメリカの絵図が変わってしまいます。(本稿を書き上げた日本時間6時半に二人とも民主党議員の当選が確定、獲得票数の差も開票率98%で民主党議員がそれぞれ0.6、1.6%の差です。共和党が再計算を要求できるのは0.5%を下回った時であり、この情報が正しければ確定となります。)
今までは上院は共和党が押さえるから民主党の好き勝手にはできないという歯止めがかかるとみていましたが、この堤防がなくなるわけですのでアメリカそのものを全て見直さねばなりません。
一つは政府方針がばらまき型になり、インフラ整備などに多額の資金を投じるとみられることから財政問題がすぐに出てくると思います。その場合、アメリカの国債は価格が下がり(利回りは上昇)、米ドルは売られやすくなり、アメリカの物価は上昇しやすくなる、またドルの価値が将来的に下がると見込まれれればアメリカ向けの投資は手控えられることがシナリオとして成り立ちます。
各種ドルインデックスは既に90を割り込んでおり、2018年につけた89-88水準を切ってくれば下げ足が速まる可能性があります。ドル下落は通常円高となるのですがどうも円が弱弱しく、ユーロやカナダドルがか買われやすい環境にありそうです。
目先株価は上昇していますが、これは新政権がコロナ救済にかかる現金給付を2000㌦にすることへのハードルが無くなるため、そのお金が株式市場に廻るからと理解されています。きわめて短視眼的ポジションです。法人税は将来的に28%へ上昇、富裕税と株式キャピタルゲイン課税が見込まれます。
一方、外交については個人的には2021年前半は国内の分断化対策とコロナ対応でほとんど動けないのではないかとみています。それは外交となればカウンターパートも必要ですが、相手方も動けないという事情も出てきます。つまり今は外交を語る時期ではないようです。
この間、中国は多分、唯我独尊、我が道を行くを貫きますが、鬼の居ぬ間に様々な工作をする可能性はあり、後々にバイデン外交の失策が問われる下地を作るかもしれません。対イランも口先と実際の行動が違い、後手に回りそうです。バイデン氏自身が高齢でコロナリスクが高いわけで世界を飛び回ることがほぼできない足かせが尾を引きそうです。
問題は日本です。アメリカの動きが鈍い中で日本もどう見てもボロボロ状態で極めて弱体化しているように思えます。世界中が弱体化しているなら別ですが、東南アジアにはコロナの影響を最小限に食い止めている国がいくつもあり、中国も不気味です。よって日本がアメリカの支えを十分に受けらず失速するリスクを見なくてはいけないかもしれません。
2021年はその意味では要注意です。しっかりとシートベルトはした方がよさそうです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年1月7日の記事より転載させていただきました。