菅総理、覚悟の緊急事態宣言。しかし菅内閣にいま決定的に足りない3つのこと

こんにちは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。

衆参両院での質疑の後、ついに菅総理が緊急事態宣言を発令されました。

菅首相 「必ず事態を改善させるため ありとあらゆる方策を」(NHK)

(1)飲食店の午後8時までの時間短縮を徹底
(2)テレワークによる出勤者7割減
(3)午後8時以降の不要不急の外出自粛
(4)イベント(スポーツ観戦、コンサートなど)の入場制限

が四本柱ということで、細かなことを言い出せばキリはありませんが、一国民としても政治家としてもしっかりと遵守をして一日も早く宣言が解除されるよう努めたいと思います。

この緊急事態宣言という一手に、菅総理は大げさでなく政治生命がかかっているわけですから、相当な覚悟をもって臨んだのだと推察します。

しかし、記者会見こそ無難に行っていたものの、そこに至るまでや内容については決定的に「足りないもの」をいくつか感じました。

(1)国民に説明する姿勢

前回の緊急事態宣言直前の国会質疑では、安倍総理(当時)が前面に立ったにもかかわらず、今回は菅総理の出席なし。

たとえ答弁内容は変わらないとしても、西村大臣に任せるのではなく、「総理が自ら国会≒国民に対して説明に立ち、メッセージを伝える」という姿勢は重要ではないでしょうか。

橋下徹氏 菅首相の衆参議院運営委出席せずに「連日、全部、菅さんが出てメッセージ出すべき」

ただでさえ今回の緊急事態宣言では行動変容が起きるか不安視されている中、この「逃げ」の姿勢は評価できるものではありません。

(2)追加の経済対策

休業要請をする飲食店に対しては、1日6万円と休業補償の増額が発表されましたが…

その他にも多く影響を被る業界があるにもかかわらず、持続化給付金のような経済政策は今のところ一切ナシ。

これでは深刻な経済ダメージを、ミクロでもマクロでも乗り越えることは到底不可能です。特に「お願い」ベースで一部業界を萎縮だけさせるなど言語道断といえます。

すでに発表されている三次補正予算は緊急事態宣言を想定していないものですから、増額や組み換えが必須です。

仮に予算に手を付けない場合でも、当面の財源はあります

というのも、前回の補正予算で組まれた「家賃支援給付金」の実績が気になり、つい先日調べたところ、

【令和2年度 第二次補正予算額:2兆242億円】

実績等の内訳:
①令和2年10月30日 3,140億円を持続化給付金に充当
②令和2年12月28日 2,220億円を持続化給付金に充当
③令和2年12月28日時点 給付額は約6,700億円、申請件数は約86万件、給付件数は約75万件
④委託費 約942億円
⑤残額 約7,240億円(= 予算額 -(①+②+③+④))

7,000億円を超える予算が残っています。

これは「経営革新・創業促進費」という項目に計上されていますから、経営支援に転用することが比較的容易に可能なはずです。

そもそも家賃給付が想定より大幅に下回り、大半が持続化給付金に転用されたことについては何がボトルネックだったのか検証が必要ですが、とにもかくにも財源を眠らせず行き渡らせることが急務といえます。

加えて業界以外への経済対策としては、消費税の減税や追加の現金給付なども当然に選択肢に入れるべきだと思います。

(3)特措法改正へのスピード感

本日の国会質疑の中で、特措法の改正は2月上旬。施行は中旬になることが明らかになりました。

これは補正予算を審議している間は法案審議はしないという、国会の悪しき慣習に則っているだけでまったくのナンセンス。

三連休を返上して与野党協力のもと制度設計を固め、補正予算と並行して審議すれば月内の成立は間違いなく可能なはずです。

また内容としても、飲食店への罰則だけが盛んに議論されておりますが、医療機関に対する実行力のある要請・補償についても法律で規定するべきでしょう。

つまり内容・スピードともに特措法改正に向き合う政府与党の考えは極めて甘く、方針転換をしなければこの事態を乗り切ることができるとは思えません。

「伝家の宝刀」を抜き去り、ここからは本当に勝負の一ヶ月間となります。

これで感染拡大を防ぐことができなければ、あるいは防いだとしても経済に致命的なダメージが発生するとすれば、菅内閣が倒れる事態にもなりかねません。

本日述べたようにいくつかのポイントは、今からでも軌道修正が可能なはずです。

明日以降も加速化する特措法の協議などを通じて、引き続き必要不可欠かつ建設的な提案を続けてまいります。

それでは、また明日。


編集部より:この記事は、参議院議員、音喜多駿氏(東京選挙区、日本維新の会)のブログ2021年1月7日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。