共産党は解散すべき―防衛政策無き立民と共産党の関係―(屋山 太郎)

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総選挙は9月末までに行われる。新しい政党分布を期待している人はいないだろう。菅政権の人気が就任時の60%程度から40%台まで下がった。もし自民党支持者がこの勢いで堕ちれば政権交代の可能性が出てくる。しかし自民党の支持率は20年12月28日付けの読売新聞世論調査によると、42%から38%に落ちた程度である。

対抗馬の立憲民主党は前回5%だったのに3%に落ちている。コロナ対策では今のところ政府の施策を評価するのは無理。ひたすら不安感が強まって不快になるが、これは内閣のせいではない。モリカケ、桜を見る会で政治に神経質な人は腹を立てるだろうが、常識的な一般人はそれほど腹を立てる事柄ではない。政治家に会計士のようなことを強要しても限度がある。桜を見る会の招待者が1,500人を超えたと大騒ぎしているが、7年も総理大臣をやれば毎年、世話になった人が100人や200人くらい増えていくのは当然だろう。

この6、7年で野党は正面から日本の政治を見据えるということをしなかった。枝野幸男・立憲民主党代表は安倍晋三氏が首相をしている限り憲法改正の論議はしないと言っていた。まるで昭和の社会党のような言い分だが、それによって立憲民主党は何を得たのか。

安倍晋三氏は歴代内閣最長を記録し、その間、衆・参選挙を6回も連続で勝利した。その勝利の集団を今、菅義偉内閣が引き継いでコロナで苦労している訳だが、コロナは選挙の結果を大きくは左右しないだろう。過去6回の選挙で自民党が勝ち続けたのは、安倍氏の国土防衛にかかる努力ではないか。

防衛は日米安保条約があるから安全と皆が思い込んでいた。他方、憲法上安保条約の締結権はあるが米軍と共に行使する権利はないと解釈されてきた。安倍氏はその解釈を変更し、防衛庁の省昇格、自衛隊の地位の向上も図った。一方では中国が相当のスピードで軍事力を強化している。中国の重武装化に応じて、「何もしなければ相手も攻めない」と願う非武装中立論は世の中から立ち消えた。

日米だけでは中国に勝てないと計算する軍事専門家もいる。このため安倍氏が構想したのが印、豪を加えて「日米印豪」による中国包囲網である。事態の深刻さを悟った英仏独が「インド太平洋構想」に参加を申し出ている。これは明らかに自由主義と共産主義の争いだ。

こうした不安な世界情勢を受けて、立憲民主党は何か対策を持っているのか。これまで立憲民主党は枝野氏が代表を続ける限り、支持者は増えるという勘定だった。しかし減っているのは防衛政策が無いせいではないか。なぜ無いかと言えば後ろに共産党がついているからだ。共産党も党員やしんぶん赤旗が減っている。いっそ「野党一体となれ」と言う人がいる。落ち目と落ち目が合体しても、前回と同じになる。組み合わせがおかしい。

(令和3年1月13日付静岡新聞『論壇』より転載)

屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生まれ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、解説委員兼編集委員などを歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。著書に『安倍外交で日本は強くなる』など多数。


編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2021年1月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。