サイゼリヤ社長「ふざけんなよ」に込められた想い

濱田 浩一郎

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午後8時までの時短要請に応じているサイゼリヤの堀埜一成社長は、1月13日に決算会見を行い、政府がランチでも感染リスクが高いと注意を呼びかけたことについて、「きょうまた、ランチがどうのこうのと言われて、ふざけんなよと」と述べた。

これは、西村康稔(経済再生担当相)が前日に記者会見で「(午後)8時以降の外出自粛をお願いしているが、昼食・ランチはみんなと一緒に食べてもリスクが低いわけではない」「どうしても勤務に来ると昼ご飯を食べる、帰り(の)夜は食べるということになってくる。あるいは同僚で食べる、あるいは久しぶりに会う友達と食べる。これが、一番リスクが高いと言われているので、ぜひこれを徹底して(控えることを)お願いしたい」と述べたことに反論したものであろう。反論というよりも、怒りの声と言ったほうが良い。

社長が怒るのは当たり前だ。それまで、政府や自治体は「午後8時からは飲食等は自粛してくださいね」と主張していたにも関わらず、急に「ランチもコロナ感染の可能性があります。自粛してください」と言い出したのだから。

西村大臣の発言を全て忠実に守った飲食店は、最悪の場合、消滅してしまうだろう。また、大臣の今回の発言は、時短要請というものが全く意味のないものである事を露呈してしまっているのではないか。

午後8時以前でも、感染する可能性があるのだから、いつ営業しても良いではないか。時短ではなく、飲食店の感染防止対策こそ肝要なのだ。西村大臣の言葉は、裏を返すと、飲食店に対し、夜も昼も営業自粛してくださいねと言っているに等しい。今、飲食店は苦境に立ち、夜がダメなら、朝だという事で、朝に注力した営業を展開しているところもある。朝ラー(朝ラーメン)や、フランス料理店の朝のコースなどもそうだろう。

西村大臣の発言は、そうした飲食店の苦しみや努力を無にするに同じ。今度は「朝の飲食も自粛してくださいね」と主張してくる可能性も高い。

サイゼリヤが、野菜類を自社農場と契約農家で生産したり、加工肉などはオーストラリアの自社工場で生産したりするなど、低価格でおいしいイタリアンを提供するための企業努力を続けてきたことは有名だ。

サイゼ社長の「ふざけんな」との言葉は、適切な補償なき、無責任で二転三転する政府への怒りが込められているのだ。西村大臣ら政府高官は、サイゼリヤを利用したことがあるのだろうか。