米韓の離間に圧力を増す北朝鮮

朝鮮労働党第8回大会の記念閲兵式に出席した金正恩氏(朝鮮中央通信より引用)

今月5日から12日まで8日間続いた北朝鮮労働党第8次大会で金正恩は「祖国統一を目指する闘争課題として強力な国防力を完成して南朝鮮で米帝の侵略武力を根本的に追い出す」と表明した。北朝鮮人民軍は専ら米軍撤収のために強化され新兵器を開発すると改めて明らかにした。これは、労働党の最優先課題であり、米軍撤収なしに、韓国との協力関係は不可能なことを意味する。

北朝鮮は米軍撤収に全く進展を見せない文在因政権への強い不満を表したわけである。今回の党大会で金正恩は総書記に登極されたが、妹の金与正は政治局候補委員から外された。軍部出身の李善権外交部長は政治局候補委員の席を維持したが、対米ラインである崔善姫外交部第一副相も党中央委員会委員から候補委員に降格された。

一方、トランプ大統領に金正恩の親書を渡した金英哲党副委員長が党書記から外された。やはり対米ラインの重要人物が党の要職から外されたわけだ。これは「米中二股」路線を歩んで来た北朝鮮が米国の次期政権に対話再会を求めるジェスチャーであると考えられる。

今回、金正恩は声明で文在寅大統領に対北支援(観光再開、ワクチン提供など)は要らないとしながら米韓同盟の離脱を促した。任期末を控え政権再創出に向けて南北平和を求める文在寅政権に恐喝したわけだ。

特に、SLBM(核弾頭ミサイル搭載潜水艦)建造を含めた核武力開発を強調、「強対強」(強硬には強硬)外交路線を示しながら米国を威嚇した。依然として虚勢をはりながら対米圧力を強化しているのが分かる。

経済面では経済発展5ヶ年計画の失敗を認定した上で自力更生を強調し、厳しい経済難に直面している事がうかがえる。水害、対北制裁に加えて新型コロナで中朝国境貿易も遮断されており、青空市場で生活用品不足と生活難で住民の不平不満が膨らんでいる。金正恩体制を脅かしかねない住民の不平不満が爆発する危険性を防ぐためには捌け口として軍事挑発に踏み切る可能性も否定出来ない。要するに内部結束用の軍事挑発だ。

27年間続いて来た米国との「対話→対話決裂→緊張→軍事挑発→対話再会」の悪循環は依然として変わらないと考えられる。

(拓殖大学主任研究員、元韓国国防省分析官)
※本稿は『世界日報』(1月16日)に掲載したコラムに筆者が加筆したものです。