なぜ国会議員は居眠りするのか:権威主義的な国会運営を変えるべき

いよいよ通常国会が開会しましたが、居眠りしている国会議員がいるということで、テレビの情報番組などでも、苦言を呈するコメントが出ています。

第204回国会開会式 衆議院HPより:編集部

国会議員の仕事の中で一番国民から見られる場面ですから、居眠りは褒められたものではありません。

また、テレビに出るタレントなどの方々からすると、おそらくテレビに出ている時間は本番そのものですので、同じようにテレビに出ている国会議員が居眠りしている姿は強い違和感を持つのだろうと思います。

国会議員が国会中に居眠りしている姿は、これまでも度々報じられてきたと思いますが、なぜ大事な国会で居眠りするのでしょうか。

もちろん、国会で議論するのが国会議員の一番大事な仕事ですし、多くの国民が見ていますので、何の言い訳もできないと思いますが、それ以外に朝から党の会議に出て政策の議論をしたり、日中に支持者や民間団体などの要請を受けたり、自ら課題と考えるテーマについて官僚と議論をしたり、党の運営に関する仕事をしたり、活動のPRをしたり、夜も議員同士や様々な人と意見交換をしたり、週末は地元に帰って現場を見たり様々な人と意見交換したりと、本当に激務ではあります。

国会や党の会議などに出席する国会議員の姿を数えきれないほど見ていますし、上の様々な場面も見ていますが、自分が質問や発言したり、出番のある時に居眠りしている人は見たことがありません。

国会に出席している時間というのは、特に全国会議員が出席する本会議は、ほとんどすべての議員は聞いているだけで出番がないので、一番集中力が途切れる時間なのではないかと思います。

居眠りする国会議員を擁護したいわけではなくて、選挙で選ばれて税金で歳費が賄われている国会議員に、もっと国民のために働いてもらうためには、ものすごく伝統を重んじる権威主義的な国会運営について、そろそろ変えた方がよいのではないかと思うのです。

今の時代の国会議員に「出番がなくても全員出席する」ことを求めるのが本当に国民のためになっているのかということです。

聞くだけなら、オンラインでもできますし、動画で見ればリアルタイムでなくても見られるので、もっと他の仕事ができます。

また、今は許されていませんが、出席している間、議論を聞きながらPCやタブレットを活用して他の仕事を並行してやってもよいのではないでしょうか。

また、予算委員会の冒頭数日の基本的質疑というのは、出番があってもなくても、ほぼ丸一日全大臣が出席することになっていますが、この間省内での政策の議論や意思決定はストップします。通常の委員会質疑は、質問者が要求した大臣だけが出席します。

コロナ禍で話題になりましたが、国会が地方議会と異なりオンラインで開催できないのも、こういう権威主義が根っこにあると思います。

議論に参加する必要な人は必ず出席する、参加しない人は動画や議事録で議論をフォローすることでもよいことにする。
出席している議員も、PCやタブレットを持ち込んで出番がなければ他の仕事をしてもよいことにする。
もちろん、国会の議論を充実させることそのものも大事です。

そうしたことを、考える時期に来ているように思います。


編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2021年1月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。