新型コロナの最初の感染時期を探れ:WHOによる武漢調査開始

2021年01月31日 11:30

中国武漢市からの情報によると、新型コロナウイルスの発生源を探る世界保健機関(WHO)の調査団は28日に2週間の隔離期間を終了し、29日から市内の視察を開始した。調査団は新型コロナの最初の発生地「華南海鮮卸売市場」や中国科学院武漢ウイルス研究所などを訪問するというが、それらが実現するか否かは中国側が調査団にどれだけ協力するかにかかっている。調査団は今後2週間、新型コロナ発生地武漢に滞在して調査を進めることになっている。

新型肺炎の対応に取り組む現場を視察する習近平国家主席(2020年2月10日、中国国営新華社通信の公式サイトから)

現地からのロイター通信によると、調査団は29日、市内の湖北省中西医結合病院を視察し、コロナ患者を診察した呼吸内科主任の張継先医師から当時の状況の報告を受けたという。

新型コロナ発生源問題では、米トランプ前政権は武漢市から30キロ離れたところにある「中国科学院・武漢ウイルス研究所」からの流出説を主張する一方、中国側は国外からの流入説を挙げてきた。例えば、米メリーランド州のフォート・デトリックにある米陸軍の研究所が2019年7月に突然閉鎖されたのはコロナ感染と関係があった、というのだ。

海外中国メディア「大紀元」は昨年2月13日、欧州に住む中国人ウイルス専門家、董宇紅氏の見解を紹介し、新型コロナウイルスがこれまでのコロナウイルスとは違ったゲノム配列であり、自然界にない人工的痕跡があること、その感染力が非常に強いことなどから、「ラボ・イベント」(人為的にウイルスを改造する実験室)で人工的に作り出された可能性があると報じて注目された(「新型肺炎は“ラボ・イベント”から」2020年2月15日参考)。

ポンペオ米国務長官(当時)は昨年5月6日の記者会見で、新型コロナウイルスの発生源について、「武漢ウイルス研究所発生源説」を繰返したが、「同説を断言できないのは、限りなく状況証拠はあるが、決定打となる証拠がないからだ。中国が新型コロナのサンプル提供や研究所への立ち入りなどを認めていないからだ」と説明している。

発生源の検証と共に、重要な問題は新型コロナの感染がいつから始まっているかの検証だ。中国当局は昨年1月20日、ヒトからヒトへの感染を認め、同23日に武漢市でロックダウン(都市封鎖)を実施し、初の感染確認は2019年12月8日と主張してきたが、欧米側の情報によると、2019年秋に新型コロナが既に発生していたという報告が多数ある。

もし「2019年秋説」が事実とすれば、武漢市が閉鎖される前に多くの感染者が国外に旅行していた可能性が考えられる。イタリア高等衛生研究所によると、同国北部の2都市に新型コロナウイルスが2019年12月に存在していたことが、同研究所が行った下水調査で判明した。ミラノやトリノの下水から2019年12月18日に採取されたサンプルに新型コロナウイルス「Sars-Cov-2」の遺伝子の痕跡が発見されたという。イタリア北部ロンバルディア州で新型コロナが爆発的に感染する数カ月前に同国で新型コロナが広がっていたことになる。

独週刊誌シュピーゲル(2021年1月16日号)によると、欧州で最初の感染地となったイタリアでは2019年11月10日、25歳の女性が最初の新型コロナ感染者と確認されたという。

感染時期で「2019年秋」説を裏付ける情報はまだ多数ある。2019年10月中国武漢で行われた第7回世界軍人運動会(武漢軍運会)に参加したカナダの選手に帰国後、新型コロナの症状の疑いが出たことが発覚している。カナダの保守系メディア「レヴェル・ニュース」が今年1月14日、軍関連情報筋の話として報じた。同紙は関連の内部文書を入手したという。それによると、カナダ軍関係者176人のうち、約3分の1が帰国時に飛行機の後部座席に隔離された。新型コロナに感染した可能性が疑われたからだという。

米国務省が今年1月15日に発表した武漢ウイルス研究所に関する「ファクトシート」によると、複数の武漢ウイルス研究所職員が2019年秋に既に新型コロナウイルス感染症の症状を示した。また、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は昨年3月13日、内部資料を引用し、中国湖北省で2019年11月17日に感染者が確認されたと報じている(海外中国メディア「大紀元」2021年1月21日)。

これらの情報が事実とすれば、なぜ中国共産党政権は「初の感染確認は2019年12月8日」と発表したのだろうか。新型コロナの発生源を調査する上でも重要なポイントだ。すなわち、中国当局は少なくとも数カ月間、新型コロナ感染の事実を隠蔽しなければならない事情があったことになるからだ。同時に、武漢発の新型コロナが短期間でパンデミックとなった理由も一層理解できることになる。

新型コロナウイルスの感染が発生して既に1年4カ月あまり時間が経過するから、発生源の調査は難しいことが予想される。武漢ウイルス研究所でコウモリを宿主とするウイルス研究を専門とする石正麗研究員は、国営メディアとのインタビューで「2019年12月30日に原因不明の肺炎患者の検体として初めて研究所に持ち込まれた。遺伝子の配列などを調査して新しいウイルスであることが判明した」と主張し、中国当局の「2019年12月8日」説を間接的に支持している。中国共産党政権は国営メディアを通じて、感染時期「2019年秋」説を否定しようと工作しているわけだ。

中国武漢発の新型コロナ感染問題で見落とされている事実がある。「なぜ中国共産党政権は1000万人の大都市武漢のロックダウンを実施したか」だ。1000万人を誇る大都市の空路、陸路を完全に封鎖するということは共産党政権にとっても大事業だ(武漢市が属する湖北省の総人口は5900万人を超える)。中国共産党政権はSARS(重症急性呼吸器症候群)の時も、豚インフルエンザの時も、大都市のロックダウンは実施していない。それでは「なぜ武漢市のロックダウンに踏み切ったか」だ。答えは一つしかない。中国共産党政権は2019年秋には新型コロナウイルスがこれまで以上に危険なウイルスであることを知っていたからではないか。「新型コロナウイルスが人工的に製造された生物兵器であった」という情報にその根拠を与えることにもなる。

新型コロナの感染が2019年秋に始まったことが判明すれば、中国共産党政権の責任が問われることになる。世界で1月30日時点、感染者数は1億人を超え、死者数は約220万人を出した新型コロナ感染の責任は余りにも重い。さすがの中国共産党政権もその責任に耐えきれないから、懸命に新型コロナ発生源とその初期感染時期の事実を隠蔽してきたのではないか。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2021年1月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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