「80歳で働いている8%」に入るために必要なのは「勉強」

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

内閣府が2018年に55歳以上の男女1,998人を対象に行った調査によると、80歳を超えて収入のある仕事についている人は8%という結果が明らかになった。この数字が多いか少ないかの議論は別にして、今後長寿化の傾向とともに数字が増えていくことはほぼ確実だろう。

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少子高齢化が続く昨今、「70歳定年説」「生涯現役社会」が話題になり、「一体、いつまで働けばよいのか?」と終わりの見えない労働に対して、ため息が聞こえてくるようだ。

だが、筆者は「生涯働く」ということに対して、「回避するべきネガティブな対象」というより「実現目標に掲げるべきポジティブな対象」と捉えるべきと考える。そして生涯現役で働き続けるために、最も必要なものは「勉強」である。

 生涯現役で解消される問題

生涯現役として稼ぎ続けることは、様々なメリットが期待できる。

まずは経済的リスクの低減だ。どれだけ貯金があっても、使う一方でひたすら目減りし続けることは、多くの人にとっては精神的苦痛や不安の元凶となる。そうなると、長生きが人生のリスク、という矛盾を抱えることになる。だが、生涯現役で働くことができれば、経済的な破綻リスクを確実に減らすことができるのだ。

メリットは金銭的なものに留まらず、社会とのつながりを維持できる点も小さくない。プレジデント誌に寄稿された「男の寿命は「奥さんを大切にすること」で延びる」という記事によると、一般的に男性は生物学的特性上、孤立を深めやすいとされる。人は社会的な動物であり、特に男性にとっては仕事は社会とのつながりに直結する最も大きなファクターだ。米ブリガムヤング大学のジュリアン・ホルトランスタッド教授は孤独でいることは、肥満や運動不足、酒の飲みすぎ以上に寿命に甚大な影響を与えると主張している。

”There is robust evidence that social isolation and loneliness significantly increase risk for premature mortality, and the magnitude of the risk exceeds that of many leading health indicators,” said Holt-Lunstad引用元:American Psychological Association”So Lonely I Could Die

できるだけ長く仕事を続けることで、この孤独によるダメージを減らすことにつながるだろう。

また、人生は何か大きなことを成し遂げるには長すぎるが、何もせずに過ごすには長すぎるものだ。仕事が長い人生に意味や目標を与え、老齢後の意欲になるなら生涯現役には大きなメリットがある。

 80代で社会から求められるには勉強が必要

80代になっても、社会から求められる人材になるためには文字通り、社会に求められる力を有することである。

これまでやってきた仕事を、定年後に現役を維持しやすい分野の筆頭は、農業や林業などの第1次産業が該当するだろう。筆者はフルーツギフトビジネスを経営している立場だが、農作物の生産現場では若者に混じって、70代が精力的に働いている光景はまったく珍しくはない。第一次産業は労働集約型なワークスタイルであることも手伝い、時代の変化や、テクノロジーの進展をダイレクトに受ける影響度合いが小さい。それ故に第一次産業についていえば、体が現役と変わらず、元気に動けることが生涯現役に求められる最大のファクターと言えるだろう。

だが、実際には多くの人にとってこれは当てはまらない。古いデータとなるが、2010年に総務省統計局が実施した、国勢調査によると、我が国における15歳以上就業者に占める産業3部門別割合は、

第1次産業:4.2%
第2次産業:25.2%
第3次産業:70.6%

となっている。つまり、労働人口の多くを占めるのはホワイトカラー・第三次産業であり、この分野で生涯現役を目指すためには、勉強を続けることによって、時代の変化に対応する努力が必要だということだ。

頭脳労働型の産業は勉強しなければ、時代や技術の変化においていかれてしまう。学者や大学教授、医者は70代は珍しくないが、彼らは例外なく日々勉強を続けている人ばかりだ。

年をとって慌てて勉強をしても、いきなりできるものではない。そのためには、日々仕事をしながら勉強を続けることが時代の変化への対応力となり、生涯現役で働くための唯一の方法と言えるだろう。