税理士試験の損得をリアルに解説!

2021年02月03日 06:00

資格をとって人生を一発逆転。

かつて、税理士試験を受けるのは、そのような方々が多くを占めていました。しかし、コロナの影響で様変わりし、安定した収入を得ることができる資格として、評価が高まりつつあります。

また、1科目ずつ受験でき、科目合格は期限がなく生涯有効。そのため、

「仕事しながらでも合格できるかも?」

そんなイメージがあるようです。

Hanasaki/iStock

しかし、現実は大いに異なります。税理士は、軽はずみに目指すべきではない。それどころか、相当の「覚悟」が無い限り、目指してはいけない資格である、と筆者は考えます。

今回は、「大物」国家資格である税理士について考察します。

(本稿では「年収」「受験期間」などを記していますが、一般的なものであり、個人差があることをご了承ください)

高めの収入と安定感

筆者は、超難関である試験を突破した税理士を、尊敬しています。また、中小企業診断士を仕事としている筆者にとって、税務相談など(※1)独占業務がある税理士は、うらやましい存在でもあります。

税務と無関連な企業はありません。そのため、他資格に比べ、経営者との接点が多く、顧問契約が取りやすい。結果、収入の安定につながる。これは、独立士業者にとって、大きなメリットです。

平均年収は、

「600万円~1,000万円程度」(※2)。

高め、と言って良いでしょう。収入が安定し、かつ高めであること。これが税理士のメリットです。

デメリットは 3つのハードル

しかし、それを超えるデメリットがあります。資格取得に時間がかかりすぎるのです。その要素は3つ。

1つ目は、受験資格を得るための時間。2つ目は、試験に合格するための時間。そして、3つ目は、実務経験を得るための時間、です。

それぞれ、説明します。

受験資格

ビジネス系士業の国家資格の多くは、受験資格の制限がありません。公認会計士、司法書士、行政書士など知名度の高い資格も、年齢・性別・学歴を問わず、誰でも受験できます。

一方、税理士試験は、経済系の科目を大学で履修しているか、日商簿記1級(又は全経簿記上級)を取得していないと、受験できません(※3)。

日商簿記1級は、簿記検定では最難関。「1年~1年半」程度の勉強が必要です。これに合格して、ようやくスタートラインに立てる。受ける前に、高いハードルがあるのが税理士試験なのです。

超難関試験突破の対価は、人生の10分の1

では、税理士試験自体に合格するには、どのくらいの期間がかかるのでしょうか?

「10年」です。

税理士の平均合格年数は「10年」(※4)。少し古いデータですが、以下の記事が参考になります。

合格までの平均年数 10.37年

税理士試験の合格まで何年かかるのか?(開示請求により入手した統計を初公開)(Markの資格Hack -税理士試験)

筆者も、過去3回ほど税理士試験を受けて(断念して)いますが、10年という年数は肌感覚と一致します。税理士試験は、問題量が、非常に多い。そのうえ、問題を見て、瞬時に解法を選び、手を動かす「反射神経」が要求される。そのスピードを習得するのは容易ではありません。

資格予備校では、3~5年と案内されることがありますが、あくまで講義のためのモデル。よほど優秀な人を除き、合格には10年かかる、と考えた方が良いです。

そして、この10年間「お休み」はありません。

資格試験全般に言えることですが、合格するまで休みはありません。もちろん休日はありますが、「受験期間中は気が休まらない」。高校や大学の受験生だった頃を思い出すとわかりやすいのではないでしょうか。あの状態が10年続きます。

受験を始めたとき、小学1年生だったお子さんが、合格するころには高校生。子供と楽しむべき貴重な時間を、合格のために費やすことになります。いや、10年費やしても合格できるとは限らないのです。

長期間、休みがない。筆者は基本的に「難関資格」をおすすめしませんが、これが最大の理由です。

実務経験

難関試験を突破しても、すぐ税理士になれるわけではありません。「2年」の実務経験が必要です。

そのため、会計事務所や企業の経理部門などで働く必要があります。

試験は、働きながら受けることができますが、実務経験は、仕事を辞めなければ獲得できません。中高年の方々の場合、就職先を見つけること自体が難しく、大きなハードルとなります。

税理士試験は、税理士になるための王道ではない

税理士になることが、いかに困難か述べてきました。困難である理由は「時間」でした。この「時間」を短縮する(可能性がある)方法が2つあります。

1つ目は、大学院に行くことです(※5)。

税理士試験を通るには、会計・税法関連の5科目に合格する必要があります。

大学院に行くことにより、この科目の一部が免除されます。百~数百万円の費用がかかることがネックですが、合格可能性が低い「5科目合格」より、受験期間を短縮できる可能性があります。

2つ目は、公認会計士資格を取ることです。

公認会計士(以下 会計士)は、税理士にもなることができます。

以前は、「税理士試験より難しい」と言われていましたが、昨今は税理士試験が難化したため、「差はない」という考えが主流になりつつあります。

また、会計士の3割強が、税理士業務を行っていることから、

「現在の公認会計士試験は、隠れた税理士資格取得試験となっている」
税理士の資格取得制度のあり方 意見書(公益財団法人 日本税務研究センター 資格取得制度研究会)

という意見があります。

税理士試験の科目合格は「生涯有効」です。じっくり勉強し、「1科目」づつ、数年かけて合格を狙うことができます。これは、「深く」理解して受験する人が多い事を意味し、試験難化の要因にもなっています。

会計士試験の科目合格は、有効期限が「2年」しかありません。集中して勉強し、「複数科目」を、同年度内に合格する必要があります。税理士試験より、「浅く広い」知識が要求される、とも言えます。

このことから、税理士試験はマラソン、会計士試験は、短距離走になぞらえられます。

大学生のように、一定期間、集中して勉強できる環境であれば、会計士試験の方が早く税理士になれる可能性が高い、と言えるでしょう。

新しい王道を歩むべき

平成27年度時点の登録税理士のデータでは、試験免除者(大学院以外を含む)が37%、会計士が13%、合計50%を占め、今後も増加傾向にあります(※6)。もはや、税理士試験5科目合格は、税理士になるための「王道」ではありません。

冒頭、「覚悟」という言葉を用いました。すでに、税理士挑戦を決めている方。科目合格している方。そういった方々は、「覚悟」がおありかと思います。しかし、それ以外の方々の受験はおすすめできません。

結論をまとめます。

・社会人が、税理士資格取得に挑むことはおすすめしない。もし、挑むのであれば、大学院を活用し、少しでも受験期間を短くする。

・学生など、集中的に時間が取れる方は、会計士試験合格を目指す。

「古い王道」ではなく「新しい王道」を歩むべき、と考えます。

税理士資格を、「収入」・「時間」といった定量面を中心に考察しました。仕事の「やりがい」・「自由度」といった定性面については考慮していません。定性面のメリットが、10年という時間に値するか。熟考いただきたいと思います。

[ 参考 ]

※1 税務相談等
本稿では、「税務の代理」「税務書類の作成」「税務相談」とする。これらを税理士等以外が行うことは、税理士法第2条にて禁じられている。

※2 年収
税理士の年収のすべて教えます(業種・年齢・経験別)(マイナビ税理士 2020/12/24)

【全312職種】職種別モデル年収平均ランキング2020(1~50位)(マイナビ転職)

新版!129の「職業別年収ランキング」(東洋経済オンライン 2018/03/1 )

※3 受験資格
税理士 (大原の仕事&資格ナビ)

※4 税理士の平均合格年数
税理士試験合格までの勉強時間は?科目ごとに勉強時間は違う(スタディング)
税理士試験の合格まで何年かかるのか?(開示請求により入手した統計を初公開)(Markの資格Hack -税理士試験)

※5 大学院免除
税理士試験が免除されるって本当?免除の条件を分かりやすく解説 (スタディング 税理士講座)

※6 試験免除・会計士 比率
税理士 試験組を試験免除者が猛追 20年で1万7千人増加(KaikeiZine)

試験免除者 26,016÷70,125人=37%
公認会計士の税理士登録 9,004÷70,125人=13%

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