国会議員の情報リテラシーの危機的な低さ

2021年02月03日 06:01

国会論戦には、「政策論争」型と「追及」型がある。

後者の代表例が不祥事や疑惑の追及だが、ほかにも、細かな事実関係の質問やクイズを出して回答に窮する大臣を責め立てるなど、パターンは多彩だ。

菅首相を追求する蓮舫議員(2021年1月27日参議院インターネット審議中継から)

ここ数年の国会論戦をみると、モリカケ、桜を見る会をはじめ、「追及」型が目立った。野党の中でも日本維新の会は「政策論争」重視、立憲民主党は「追及」重視など、政党ごとのカラーの違いも鮮明だった。

1月にスタートした今国会でも、これまでの傾向が大きく変わることはなさそうだ。立憲民主党は政策提案シフトを模索する動きもあったようだが、ここまでの予算委員会をみる限り、蓮舫議員の「総理の言葉は国民に伝わらない」をはじめ、やはり「追及」が主軸とみえる。

誤解のないよう申し上げておくと、「政策論争」は有用だが「追及」は無用、というわけではない。政府の活動が適正になされているか、大臣に資質があるか等をチェックすることは、国会の重要な役割だ。「追及」も大いになされるべきだ。

だが、問題は、「追及」が有効になされているかどうか。ここ数年の論戦では、例えば私が国家戦略特区ワーキンググループ(特区WG)委員の立場で関わっていた「加計問題」をみても、真相究明につながる議論とは程遠く、見当外れの追及ごっこにしかみえなかった。

私自身、事実無根の「追及」の被害者にもなった。2019年秋の臨時国会では森ゆうこ議員(当時は国民民主党、現在は立憲民主党)が、私が特区WG委員の立場で金銭を受け取り「収賄罪相当」の行為をしたなどと発言。篠原孝議員(所属政党は同上)は、自らのブログで同様のことを書き、「悪辣なことばかりし、自らの懐を肥やしている」などと激しい言葉で私を批判した。

森ゆうこ議員(立憲民主党サイトより)

そんな事実は全くない。事実無根の誹謗中傷なので、両議員には訴訟を提起して係争中だ。判決はまだだが、明らかになりつつあるのは、国会議員の情報リテラシーの危機的な低さだ。

訴訟で明らかになった議員の疑惑追及の現実

森議員も篠原議員も、基本的な言い訳は要するに「毎日新聞記事にそう書いてあった」ということだ。

たしかに毎日新聞にそういう記事が出た。だが、私は事実無根であることを詳細に説明した反論文を直ちに公開していた。

また、私の疑惑を報じたのは毎日新聞だけで、その後、他紙の後追いもなかった。一般には、「この記事は本当か?」と疑って当然の状況だった。

篠原孝議員(立憲民主党サイトより)

篠原議員との訴訟では1月18日に両当事者の尋問も行われた(森議員との訴訟での尋問はまだこれから)。尋問での篠原議員の言い分はこうだ。

  • 「毎日新聞が数か月にわたって多くの人に取材した記事。全面的に信頼した」
  • 「50年毎日新聞をとってきた。全国紙であり信用するのが当然」

一方、私の反論文などに関しては、

  • 反論文は「信用できないと思った」
  • (野党合同ヒアリングでは内閣府担当者が「(私に確認したら)記事は事実無根」との説明をしたはずと聞くと)「記憶にない」

(注)野党合同ヒアリングは動画アーカイブが残されており、篠原議員は明らかに出席して説明を聞いている。

(「参議院議員森ゆうこチャンネル」より)

さらに篠原議員は、ブログ記事にとどまらず、裁判の中で新たに事実無根の主張も行っている。「高橋洋一氏らが、1件150万円以上のコンサルティング料をとり、規制緩和の手助けをした」などの主張だ。そうした事実は一切なく、根拠としているらしき資料は「出所不明のネット情報」だ(野党合同ヒアリングで内閣府担当官がその旨を説明している)。これを告げると、篠原議員の答えはこうだった。

  • 「紙になって、野党ヒアリングで配布された。正しい資料と思うのは当然」

こうした言い分を訴訟でどう評価するかは、裁判官の決められることだ。ここで私がコメントするつもりはない。

だが、少なくとも明らかなのは、情報の扱い方が根本的になっていないことだ。

  • マスコミ報道だからといって常に正しいとは限らない。
  • 自分の認識と違うことにも耳を傾けないといけない。
  • ネット情報は玉石混交なので、特に注意しないといけない。

こんなことは、子供でもわかっているレベルの情報リテラシーの基本だ。

それすらわきまえない国会議員たちが、国会や野党合同ヒアリングで疑惑追及に注力しているとすれば、追及する側・される側の双方にとって時間の無駄であり、かつ、事実無根の誹謗中傷などにつながりかねず危険極まりない。

立憲民主党は、今後も「追及」重視で臨むなら、所属国会議員向けに早急に「情報リテラシー研修」を開催したほうがよい。

加えて、もうひとつ大事なことがある。

国会議員の免責特権だ。国会内での国会議員の発言は法的責任を問われない。虚偽の誹謗中傷だろうとプライバシー侵害だろうと免責される。

森議員と篠原議員の場合、ブログなど国会外での活動があったので、私はこれを対象に訴訟を起こした。しかし、もし篠原議員がブログ内容を国会内で発言していたら、私は訴訟を起こすことすらできなかった。

そうした特権を与えられた疑惑追及が、今回明らかになったレベルの情報リテラシーに基づき行われている。おそるべき状態というほかない。免責特権のあり方は、国会でしっかり議論してほしい。

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政策工房 代表取締役社長

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