緊急事態宣言が3月7日まで延長された。後手後手の菅政権の責任は重い。当面の課題は、宣言の早期解除を目指すことはもちろんだが、同時に新型コロナワクチンをどれだけ迅速かつ大人数に接種できるかにある。
目下、基礎自治体は準備に追われている。世田谷区民92万人にスムーズに実施するためには、保坂区長のリーダーシップはもちろんだが、関係機関との緊密な連携にすべてがかかっている。私はこれまでの保坂区長の言動に不安を抱いているので、この件について、アゴラですでに指摘しておいた。しかし、残念なことに、事態はまったく好ましくない方向に動いている。保坂区長は、「国がまともに情報提供しないから、区は混乱して準備できない」と文句ばかり言っている。
こうして、世田谷区がもたついている間に、他自治体では着々と準備が進められ、人口約70万人を抱える練馬区は、病院や区立施設などの会場に区民を集めて行う「集団接種」だけではなく、地元医師会の協力を得て、250か所のかかりつけ医でも「個別接種」できる独自の体制を構築。国もこれを先進事例として取り上げ、各自治体に周知した(記事はコチラ)。さらに豊島区は、集団接種と個別接種のほかに、区内26か所の「区民ひろば」で巡回接種を実施するという。世田谷区はようやく区民センターなど18か所での集団接種を決めただけである。スタートは4月からで、その間、施設の利用は停止する(世田谷区のHP参照)。
世田谷区で医療施設での個別接種が出来ないことによる不安の声は、私のもとにも届いていて、この広い世田谷区で18会場でしか接種できないとすれば、コロナ感染の恐れを踏まえると、高齢者や疾患のある方が接種控えを考えても仕方ないだろう。ワクチンは対象者の約7割以上の接種が実現して、はじめて効果を発揮するものだと言われているが、このままでは、区が掲げる「8月までに7割」の実現はかなり心もとない。
私が議会で追及した昨年4月、保坂区長は世田谷区医師会の申し入れをまともに受けず、PCR検査の拡充を遅らせたという“前科”があるが(詳細はコチラ)、今回のワクチン接種も二の舞を演じないか非常に心配である。区の見解によれば、先行するファイザー社製は、マイナス75℃という条件をクリアしなければならないので、扱いが大変だから個別接種は難しい、と理屈を言うのだが、だったら他自治体はどうしてできるのか? 言い訳はいらない。まず区長は、地元医師会としっかり連携し、個別接種を一日も早く実現するよう力を尽くすべきである。