「努力して成果を出す」「その成果を活用する」はまったくの別スキルである

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

「努力は必ず報われるとは限らない。だが、成果を出している人は皆努力している」

「正しい方法論でなされた努力のみ、結果を約束する」

このような言葉はあちこちで言い尽くされ、多くの人の手垢がついたセリフとして浸透して久しい。これらは「成果が出せるか保証なんてないけど、努力しないと何も始まらない」「成果を出すための努力こそに価値がある」という「成果」に焦点が当てられた努力論と言える。

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しかし、このセリフは本当に正しいのだろうか。筆者はかつて、まさしく社会の底辺層だった。しかし、それなりに努力をしたことで、社会的成功者になることはなくとも、あくまで自己満足の域としては自身の人生を切り開けた感覚を得た。

その経験を踏まえて言えば、この努力論には不足している点があると感じており、それが「成果を活用するためのスキル」である。この記事で論考したい。

成果を出すことと、それを活用することは別物である

努力をすることの本質的な目的とは、成果を出すことそのものにあるわけではない。そうではなく、成果を出したことで人生を豊かにすることにあると言える。

「TOEIC900点を取りたい!」と考える人は世の中に多いが、そのTOEICスコアを得てやりたいことは決まっているか?具体的にどう活用する予定なのか?と問うと答えに窮する人は少なくない。実際、過去において筆者はTOEICのハイスコアホルダーでありながら、まったく英語を活用していない人を数多く見てきた。本人が英語学習を努力する理由を「純粋に勉強そのものが楽しい」「TOEICでハイスコアを取ることが半分趣味」というならまさしく大成功しているといえる。だが、件のTOEICホルダーを含めて、多くはそうではないというのが実情だろう。「せっかく努力してTOEICスコアアップしたのに、まったく役に立ててないんだから、無意味だったよね(苦笑)」と自虐的な笑いを返された時に、「ああ、成果を出すことと活用することは別物なんだな」ということを理解した気がするのだ。

努力を始める時は、成果を定めるだけでなく、その成果をどのように用いて人生を豊かにするか?までを熟考する必要があると思うのだ。優等生タイプは、目標を定めてゴールから起点までを逆算して、必要な要素を1つずつクリアしていく努力に長けている人が多いと感じる。だが、その後の活用に惑う人は少なくない。それ故に、獲得した成果を用いて、人生を豊かにできる要素は個別スキルとして理解しておく必要がある。

成果を活用するスキルとは、市場感覚のことだ

努力して得た成果を活用するスキルとは、市場感覚そのものだと筆者は考えている。

たとえば上述した「英語力」についていえば、TOEICや英検でハイスコアホルダーになったとしても、それ自体に価値はない。だが、そのスキルをマーケットに見える化し、必要な潜在顧客に届ける活動の中で高い価値として輝き出すのだ。

筆者は独学で英語多読に取り組んだことで、英検1級とTOEIC985点を獲得した。これらの価値を帯びたのは、英語多読のオンラインスクールビジネスを立ち上げた時だ。実績のない人の言うことを聞く人など、世の中にいない。そこで筆者がやったことは、「英語を教えています→英検やTOEICを持ち、米国大学留学を経て外資系で英語使ってきました→これ全部教えますので、英語力身につけませんか?」というPRを経て、受講生を得ている。ありがたいことに、真剣にフォローをしていることにより、今のところ利用者の方からは満足を頂けている。このように努力して得た成果とは、潜在顧客に見える形でマーケットに放り込むことではじめて価値を出すのである。

自分のスキルはどのくらい社会的な価値があるのか?潜在顧客にどのように届けると、魅力的に感じてもらえるのか?こうした嗅覚は市場感覚と呼ばれる。努力をして成果を得るために必要なスキルとは、明確に別のスキルである。

時には謙虚さよりしっかりPRを

過去に海外や多国籍の環境に身を置いてきた見地から言えば、日本人の奥ゆかしさはこの市場感覚の獲得にマイナスに作用することがあると感じてしまうこともある。努力して成果を出すプロセスでの能力は高いのに、せっかく得た成果を上手にマーケットにPRできないために、活用機会を失うケースが少なくないということだ。

「自分なんて大したことありませんので…」「自慢に取られて嫌われたくない」といった控えめな態度は、謙虚さという観点から言えば、筆者も同じ日本人なので美しい姿勢に感じる。だが、真剣に悩みを解消したいと望む潜在顧客にとっては、頼りなさに感じることも多いと思うのだ。「大丈夫、おまかせください」と自信と頼もしさを感じさせる態度で接し、あとは言葉と行動の不一致を起こさないよう、真剣に顧客満足のために活動することだ。