コロナ禍でカリフォルニア州からの脱出「カレキソダス」加速、米政治マップを塗り替え?

2021年02月10日 06:00

トランプ大統領が就任した2017年、カリフォルニア州では同州の米国離脱を求める声が高まり、同年1月にロイター/Ipsosが実施した世論調査では、州民の3人に1人が支持していました。それがCalexit=California+Exitで、Brexitから派生した言葉です。カリフォルニア州といえば、2017年には英国を抜き世界でGDP5位に浮上してますから、独立したくなる気持ちも分かります。

Gilnature/iStock

あれから4年、カリフォルニア州ではCalexodus=カレキソダスというフレーズが浸透しつつあります。これはCalifornia+Exodusから成る造語で、「カリフォルニア州からの脱出」を意味します。トランプ前政権が誕生した時にはカリフォルニアの米国離脱を求めていた彼らに、一体何が起こったというのでしょうか?

最大の理由は、新型コロナウイルス感染拡大です。コロナ感染者第1号こそワシントン州でしたが、全米初のコロナ死亡者が確認されたのはシリコンバレーのお膝元であるカリフォルニア州クララ郡でした(注:当初は20年2月29日でワシントン州と報道も、後に2月6日にカリフォルニア州の感染者が第1号として認定)。また、民主党のニューサム知事の下、全米で3番目に非常事態を宣言、20年3月19日には全米で初めて外出禁止措置を踏み切ったものです。その後、カリフォルニア州は同年5月4日に段階的な経済活動を再開させたものの、20年7月には感染者数がNY州を超え全米で最多に(21年2月3日時点でもコロナ感染者数は337万人で同州が1位)。同年11月21日には第2波を受け夜間外出禁止令が発動、解除には21年1月25日まで待たねばなりませんでした。

感染拡大と同時に、エンジニアや士業などを含む専門サービスや情報といった業種が経済の約4分の1を担うカリフォルニア州では、在宅勤務が一気に普及するようになりました。サンフランシスコに本社を置くツイッター社は20年6月に在宅勤務の恒久化を決定、決済大手スクエアやビジネスチャットアプリ大手スラックも続きました。アップルやアルファベット、フェイスブックは、少なくとも今年の夏までの在宅勤務を承認しています。

チャート:在宅勤務を行う労働者の割合は1月に低下も、ワークライフバランスを重視する企業はリモートワークを推進か
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(作成:My Big Apple NY)

カレキソダスを後押ししたのが、高騰する家賃です。例えばカリフォルニア州サンフランシスコの家賃の平均値は2019年に2011年比で一時60.5%の3,933ドル(約41万円)も急騰していました。家計所得中央値はというと、2019年時点で114,696ドルと日本でいう1000万円乗せながら、2011年比40%増にとどまります。さらに、単純に家賃の平均値を当てはめると、月収の3割までという鉄則を超えてしまうわけですね。そこへきて、コロナ感染拡大と在宅勤務の導入が加わり、このコラムでよく紹介するhipsturbia=郊外へ引っ越す若者の動きを加速させたというわけです。

さらに駄目押しとして、一部州税の引き上げが挙げられます。カリフォルニア州は2017年に成立した州法に沿い、2020年6月に燃料税を1ガロン当たり47.3セントから50.5セントへ引き上げました。しかし今後、さらなる増税に直面しかねません。例えば、州議会法案1253が可決されれば、所得税の限界税率が既に全米最高の13.3%から、16.8%へ引き上げられてしまいます。さらに、富裕税を検討中で、州議会法案2088によれば、昨年末時点での純資産が30万ドル以上の納税者に、0.4%課税する方針です。2018年に成立した税制改正法により、州・地方税の控除(財産税、所得税または売上税など)の上限が1万ドルと設定されているだけに、高所得者層にとっては懲罰的な増税と言えるでしょう。

電気自動車大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が20年12月、突如カリフォルニア州を捨てテキサス州への引っ越しを決定したのは、所得税率引き上げ懸念が背景にあったのではないでしょうか。テキサス州では、所得税を課税していませんからね。事業主にとっても、カリフォルニア州の税制を脅威と捉えたのか、セールスフォースやヒューレット・パッカードもテキサス州への移転を決定しました。

問題は、カレキソダスが与える政治への影響です。2020年の米大統領選で、保守寄りとされるアリゾナ州は0.3%ポイント差にて、1996年以来で初めて民主党候補を選出しました。この理由に、カレキソダスが関わっている可能性があります。といいますのも、カレキソダスは家賃高騰を理由にコロナ以前から確認されており、何と201819年にアリゾナ州へ転入した米国人の4分の1は、カリフォルニア州からの引っ越し組だったのですよ。そう、リベラル派が多い元カリフォルニア州民が、アリゾナ州の政治色を一変させたと考えられるわけです。

チャート:アリゾナ州への転入者に占めるカリフォルニア州出身者とその割合

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(作成:My Big Apple NY)

ちなみに、0.2%ポイント差にて1992年以来で初の民主党候補を選出したジョージア州も、転入組の1割を元カリフォルニア州と元NY州民が占めていました。大都市圏から郊外への人口流入が進めば、レッドステートがパープルを経てブルーにシフトするのか。カリフォルニア州やNY州からの脱出組は同州で居場所がなくなりつつある保守派との説もあります。いずれにしても、米国はコロナ禍を経て、政党支持マップを振り返る壮大な実験に入ったかのようです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年2月9日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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