立場と発言力の関係、森氏はなぜこれほど非難されるのか?

オリパラ大会組織委員会の森会長の立場が厳しくなってきました。個人的には12日に開催される組織委員会の臨時会合前後で大きな動きが出るとみています。仮にでなければ驚きです。

私がなぜ、この問題を執拗に取り上げるか、と言えばオリンピックが世界の祭典であり、特に今回は開催すればコロナで苦しむ世界に向けたメッセージとなる重要な意味合いがあるからです。ところが世界で既に悪名高き組織委員会の委員長が世界にメッセージとなればブーイングは間違いなく、1年待ってついにその舞台に立ったとしても日本中がつまらない思いをしなくてはならないのです。

森会長の発言をどうとるかは個人の自由であります。擁護できる、あるいはそこまで厳しいことを言わなくてもよいだろう、という見方もあります。それは個人の感性の問題であり、100人100様で構いません。ただ、森会長という立場がそれを許さないのです。トップに立つ人は全てにおいてお手本にならねばならない、100点じゃダメなのです。120点取って当たり前。

トップに誰でも立てるわけではない理由はこの点数の問題なのです。昔は根回しや地盤でどうにかなりました。そんな昔の話は今は通じないのです。立場ある人は完璧な仕事を求められる非常に生きにくい時代になったのです。そこをまずは認識すべきでしょう。

トランプ大統領の弾劾裁判についてその合憲性を問う採決は56対44で可決しました。6票は共和党からの造反であります。実際の弾劾裁判は共和党から17名の造反が出ないと成立しないため、多くのメディアは無罪だろうとみています。私も無罪になるとは思いますが、注目は共和党から造反者が何人出るか、であります。この6人の造反の可能性だけではなく、ひょっとするともっと増えるのではないかという気もします。

なぜ、トランプ氏がここまで叩かれることになったか、その一つの理由は国際世論とアメリカの威信であります。トップたるものがとるべき行動規範を完全に逸脱した、ということです。個人的には共和党議員がトランプ氏にそこまで配慮する理由がよくわからないのですが、トランプ氏が再び政治に世界に戻ることもないと考えています。(年齢も年齢です。)

1992年、マクドナルド裁判というのがありました。ドライブスルーでマックのコーヒーを買ったおばあさんがそのコーヒーを足の間に挟んだところ、コーヒーがこぼれてやけどした「事件」でマクドナルドは懲罰的罰金3億円を言い渡されています。(のちに和解しており、そんな額の支払いはしていません。)その後、アメリカの裁判では懲罰的判断が下されるのが流れとなりました。アメリカのトヨタもそれで苦しんだ企業の一つです。

なぜ、懲罰的罰則が与えられるのか、と言えばそれは大企業たるもの、リーダーとしての道筋を作らねばならないのに落ち度があった、その落ち度を放置すれば同じ業界の小さな末端のコーヒーショップまでそれを改善しようとする動きにはならないだろう、だからこそ、業界のトップが二度とそんなことが起きないように厳しい措置をするよう深く反省させ、さらし首にし、嘲笑の対象とさせるのであります。現代版「市中引き回し」そのものなのです。

森会長は今、その懲罰的判断の対象にあるとみています。ただそれだけなら話は簡単なのですが、私が見て取るもう一つの動きは「女性維新」であります。つまり、女性が立ち上がり、今までタブーだったことでも発言をするようになった点であります。小池都知事が17日のオリンピック4者会談に出ないとか、橋下聖子大臣が二階発言に苦言を呈したなどは今までの政治や社会構成ではありえないのです。

小池発言については賛否両論となっているようですが、私がネットで拾ったコメント、「自分を排除してどうする」(古舘伊知郎)、「東京都の長がこういうやり方をするのは非常に違和感」(ひるおびの八代英輝弁護士)と述べているようですが、恥ずかしい読み間違いです。小池さんは森さんが辞める、そして17日には森さんがすでに辞めているので出席する、というはずです。これは小池さんの一流の計算に基づいています。それが成功すれば、小池さんは首相への道が一歩近づくのです。小池さんを嫌いな年配の男性は非常に多いのですが、彼女は策士です。多分、小泉純一郎氏をしのぐかもしれないと思っています。

それとは別にこの「維新」は社会の理不尽、特に「政治的にそう決まっている」という不明瞭な部分に今後、スポットが当たっていき、様々な透明化が進むはずです。政治家や「元」官僚が幅を利かせる時代は大きく改善されなくてはいけないということです。

その意味では日本でいう女性活躍の本当の時代を日本が受け入れるかどうか、その大きな判断がこの数日中に起きるのかもしれません。さて、日本は飛躍できるでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年2月11日の記事より転載させていただきました。