広島大規模PCR検査「試行」の目的は?今こそ勇気ある撤退を!

こんにちは、広島市議会議員(安佐南区、自由民主党)・むくぎ太一(椋木太一)です。

広島県による「大規模PCR検査」で、県は2月19日から3日間、広島市中区の一部地域の住民らを対象にPCR検査を「試行」することを発表しました。

Okan Celik/iStock

対象地域の住民は約2万5千人で、県は統計データなどを基に6000人が受検すると想定しています。このほか、同区内の事業所にも呼びかけ、2000人が応じるとみています。費用7000万円です。

まず、「大規模PCR検査」についておさらいします。

広島県は1月14日、広島市4区(中、南、東、西)の住民ら最大80万人を対象にPCR検査を実施する方針を明らかにしました。「無症状者を早期に捕捉し、感染拡大を防ぐ」ことが狙いです。当初から、PCR検査の実効性や費用対効果などから批判が相次ぎました。そのような中、2月3、4日の県議会臨時会で、費用10億円を盛り込んだ今年度補正予算案が承認されます。しかし、大規模PCR検査への批判は収まりません。広島市内の感染者数が一桁台で減少傾向にあったこともあり、広島県は2月9日、規模を大幅に縮小する方針を示しました。そして、2月10日に上記のような「試行」を打ち出したのです。

このように、批判にさらされ混迷が続く「大規模PCR検査」ですが、県が検査を「試行」することを決めたことで、様々な疑問やご意見をいただいております。そこで、県当局に直接、質問をぶつけてみましたのでご覧ください。

Q:「試行」の対象地域を選んだ基準は?

A:「試行」ということもありランダムに選んでいる

 

Q:対象地域の住民への事前説明は済んでいるのか。今後の予定は?

A:今日(2月10日)の記者会見で初めて対象地域が出た。説明は行っていない

 

Q:対象地域を抱える各学校への説明は?

A:これから配慮したい

 

Q:受検の想定6000人の根拠は何か?

A:旧市民球場跡地を検査場にした場合、1日2000人が処理できる最大値。これを3日間で6000人という数字が出てくる。県のデータで、一定エリアで30%程度が受けるというものがある。6000人受検と想定した場合、4人に1人(25%)が受けるとすると、約2万5000人の住民を対象にする必要がある。ここに、中区の各地域の人口やエリア分布などを加味して、最終的に地域を絞った。「試行」なので、サンプリングのイメージ

 

Q:大規模PCR検査の目的・狙いは、「無症状者を早期に補足して感染拡大を防ぐこと」。「試行」はそこから外れているのではないか?

A:大規模PCR検査を見据えた上での「試行」。目的、狙いは変わりない

 

Q:それでは、「試行」の目標はどこにおいているのか?

A:あくまで「試行」なので、大規模PCR検査が円滑にできるようにするために行うもの。

何かデータ的なものが出るかもしれないが、8000人(事業者含む)では数が少ない。すでに、PCRセンターで3万人受検している。データ的なものが必要ならそれでいい

 

Q:費用7000万円はどう使われるのか?

A:検査料、会場の運営費、対象住民への周知のためのポスティング、人件費、データの入力などに使われる

 

Q:予算10億円の残りはどうなるのか?
A:来るべき大規模PCR検査に備える

 

Q:10億円は今年度の補正予算。次年度である4月以降使う(大規模PCR検査を行う)には、繰り越ししなければならず、議会への説明と承認が必要になるが?

A:4月以降になる場合、当然、議会に諮ることになる。ただ、今は3月までにやることが前提

 

Q:検査キットはどこのものか?

A:大規模な検査に備えて、様々なメーカーから購入している。キットと言っても唾液を入れる容器

 

平たく言えば、中区の一部地域を対象にしたこの「試行」は、「リハーサル」という位置づけでロジックが組み立てられています。つまり、いつになるかは分かりませんが、「大規模PCR検査」を行う可能性を残しています。そして、2月19日から「試行」は始まります。陽性判明者が「感染者」とカウントされる以上、「試行」の受験者がゼロでない限り、広島市の「感染者」は間違いなく増えてしまいす。ということは、「感染者」の日々の健康観察や、濃厚接触者らへの追跡といった様々な業務が広島市の「現場」に降りかかってくるわけです。これは保健所や担当部局に限りません。中区の学校で臨時休校の措置が増えることも想定されます。また、事業所も対象になっているため、社員の休業(療養)によって営業に支障をきたす恐れもあります。年度末に向かって追い込みの時期ですので、大きな痛手となりえます。

ワクチン接種の開始が現実的になってきている時期に、上記のような事態に対処するのは「現場」である広島市です。これは、間接的な大きなロスとなります。広島市や広島市民の生命・財産を守る立場にある広島市議会議員の一人としては、到底、看過できることではありません。この「試行」は、大規模PCR検査へのリハーサルという位置づけで将来の実施の可能性を残していますが、新たな局面へ進むため、勇気ある撤退を強く望むのです。