台風と同じくらい油断できない、春の嵐:暴力的な爆弾低気圧

2021年02月16日 06:00

光が明るくなり、たまに暖かい日も訪れる今日この頃。地方によっては梅の花も咲き始め、春の兆しを感じられることも増えてきました。

春というと、おだやかで暖かなイメージがあります。

iiievgeniy/iStock

しかし、その実態は意外と暴力的です。

たとえば、春一番。これは、地方によって定義はさまざまですが、関東地方では立春から春分などの期間に初めて吹く、風速8m/s以上の南寄りの風のことを指します。

風速8m/sといえば時速に換算すると28.8kmとなりますので、原付に乗って走っているときに体が受ける風をイメージするとわかりやすいと思います。どうですか? 結構強い風だと思いませんか?

春一番のような強い南風は、春先によく吹くものです。気温は高くなるけれど、舞い上がった砂ぼこりが目に入って外を歩くのが大変ですよね。このような強い風は、日本列島を通過する温帯低気圧によってもたらされます。

暖かい空気と冷たい空気で構成されている温帯低気圧は、通過するときに暖かい南寄りの風が吹き、通過した後は冷たい北寄りの風が吹きます。南寄りの風が吹けば気温がグッと上がりますし、北寄りの風が吹けば気温がまた下がります。ですから、春に向かうこの季節は、日ごとにゆるゆると気温が上がっていくのではなく、寒い日と暖かい日が交互に訪れて、いつの間にか気温が上がっていくことに気づきます。まさに「三寒四温」ですね。

さて、低気圧が通過すると聞いても、「また、いつものやつか」とたいして警戒しないことが多いのではないかと思います。しかし、この季節の低気圧は厄介です。ときには急速に発達して「爆弾低気圧」と呼ばれることもあるからです。

というのは、気象庁で使われている言葉ではないのですが、耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。一般的に「中心気圧が24時間で 24 × sinφ/ sin60°以上下がる温帯低気圧」は爆弾低気圧と呼ばれています。sinφ/ sin60°という数式が出るとなんだか難しそうですが、要するに緯度によって爆弾低気圧と定義される気圧低下の度合いが違うということです。

たとえば、北緯40度の秋田県では、24時間で17.8hPa気圧が低下するものが爆弾低気圧と呼ばれます。ちょうど2月15日~16日にかけて日本列島を通過した低気圧も、中心付近の気圧が15日3時から18時にかけて30hPaも下がったので、爆弾低気圧級といえます。

爆弾低気圧の天気図を見ると、等圧線の間隔が非常に狭く、ときには台風並みの強い風が吹くこともあります。こうなると海では船が転覆したり、車や電車が横転したりするかもしれません。また、春先は北国や雪国でまだ雪が残っているため、ホワイトアウトによる事故が発生する可能性もあります。特に先日の大地震で地盤のゆるんでいる東北地方では、大雨によって土砂災害が発生しやすくなっています。

台風が夏から秋にかけて日本を訪れる嵐だとすると、爆弾低気圧は冬から春にかけて訪れる嵐です。爆弾低気圧は1日で急に発達しますから、台風のように発生してから日本に接近するまでの数日間であらかじめ準備しておくことが難しいところが厄介です。「春」や「温帯」というおだやかな印象の言葉に惑わされず、天気予報をこまめにチェックして安全への備えを行ってほしいと思います。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
気象予報士・サイエンスライター

過去の記事

ページの先頭に戻る↑