2021年も残すところあとわずか。そこで今年を振り返る上で、2021年のアゴラアクセスランキングBest5を紹介します。アクセスランキング第3位はこちら。2021年2月20日掲載、黒坂 岳央氏の記事です。
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黒坂岳央(くろさか たけを)です。
高級椅子の代名詞「アーロンチェア」が、中古OAショップで大量中古販売されている。アーロンチェアといえば、人間工学(エルゴノミクス)に基づいて設計されており、細かい調整で99%の人の体格に対応可能と椅子である。筆者は過去に都内の某外資系企業を訪れた際に、全社員のデスクチェアにこのアーロンチェアを支給している光景を見て、驚いた経験がある。
本来は20万円ほどする大変高価なものが、中古OAショップを中心に大量中古販売されている状況を考察したい。
オフィスの閉鎖で大量に椅子が余っている
新型コロナの感染拡大により、世界的にリモートワークが奨励されている。その影響でオフィスを縮小したり、閉鎖する企業も出てきた。企業の中には「恒久的にリモートワークスタイルを採用する」と発表するところもあり、これは実質的にオフィスの所有を放棄する姿勢だ。
このような大きな変革に迫られたことで、急速にオフィス用品が不要になっている。Twitterでは次のツイートが拡散され、大きな話題を呼んでいる。
また、中古OAショップをショップだけでなく、ヤフーオークションなどでも同様にアーロンチェアが中古販売されている。出品物の中には「展示品」と書かれているものもあり、これらは個人出品ではなく、中古販売ショップによるものと見られる。
Twitterに投稿された写真を見る限り、不要となった大量の椅子が持ち込まれた様子がわかる。大量に人員を抱える大手企業も、夜はオフィスの電気が消灯していることも見かける。会社は存続しているので、リモートワークに切り替えたのだろう。
現況が長期化することで、オフィスを手放す企業はさらに増えるはずだ。そう考えると、「椅子余り」の状況はこれから加速していく公算が大きい。椅子を製造・小売販売する企業も中古市場がこれだけ活況であると、売上減の影響を受ける可能性は否定できない。本当に様々な業種、様態に大きな影響を与える感染症だとため息が漏れる。
中古椅子の需要はリモートワークが引き受ける
自然な流れとして、椅子余りの需要はリモートワークが引き受けることになるだろう。
昨今、在宅勤務が始まったことで、「自宅内のオフィス家具を充実させたい」という新たなニーズが生まれている。
ITメディアビジネスの記事によると、在宅勤務が進んだことでECサイト経由で椅子がよく売れているという。
“1月~11月における商品カテゴリー別の売り上げを見ると、回転イスが前年同期比374%を記録した。
引用元:ITメディアビジネス「在宅勤務用に売れた「オフィス家具」ランキング トップ5のうち4つを占めたのは? コクヨが発表」“
同記事によると「普段、使用している家庭用の椅子では疲労度や姿勢に影響があったためと分析している。その他にもデスクが人気であり、「自宅はくつろぐスペース」というものから、「仕事をする場所」へと転用したことでオフィス家具の充実化を図る動きが出ている。
この流れを受け、今後は新品にこだわらない人の一部により、中古市場に潤沢に出ている椅子を求める人も出てくるはずだ。企業のオフィス現場で不要になった椅子を中古市場が引き受け、最終的に個人宅へと流れていくわけだ。
椅子だけではない!ホテル廃業が生み出す中古販売
また、ホテルの廃業に伴う、家電製品の放出も続いている。
愛知県にリサイクル・ディスカウント店舗展開をしているキンブルのアカウントでは、ホテルから1ドア冷蔵庫が大量販売されたと告知されている。驚くべきことにその価格はわずか550円(税込)だ。
その他にも、業務用と思しきグラスや棚などの家具、ホテルで提供していたであろう、使い捨て歯ブラシなどの中古販売も告知されている。外出自粛などで苦境に立たされ、ビジネスをたたむことになった観光業に携わる人々の言葉なき悲愴感が伝わってくる。
一日も早く、ウイルスの驚異なき世界が戻ってくることを願うばかりだ。