ポストコロナの会社経営

2021年02月22日 17:00

先日、ブリティッシュコロンビア州の政府関係者を招いたオンラインセミナーを主催しました。州政府が提供するコロナの企業支援プログラムについて日系の地元企業向けの説明会で多くの参加者がありました。その中の一つに州政府が新しいプログラムとして打ち出した中小企業向けのオンライン化を進めるための助成金プログラムがあり、「オンライン化にお金を使えば7500ドル(約62万円)」であります。プログラムの担当者曰く、発表したとたん大人気で政府予算が枯渇しそうな状況だそうです。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

また、それとは別に大きく打撃を受けた中小の事業者に事業再生プログラムがあり、こちらは一般事業者のビジネス再生には最大3万ドル(250万円)、旅行や飲食関係には最大4.5万ドル(370万円)が支給されます。こちらも事業再生に関していかに前向きにお金を使うか、というのが趣旨でどちらかと言えば投資を促進し、お金の循環を図り、州内経済が活性化することを目論んでいます。ちなみに投資のために採用する会社は州内企業に限定しているところに意味があります。

事業者にとってお金を使うというのは新しい技術や作業効率が上がる仕組みを取り入れることに他なりません。今後、多くの商店がオンラインストアを持ち、レストランはオンラインオーダーとなっていくでしょう。これはコロナでそもそも従業員の数を減らしていた中で徐々に通常期に戻っていく過程において人の採用が絞り込まれる可能性をも意味します。

アメリカではバイデン政権が最低時給を15ドルに引き上げるとしていますが、企業は既にそれに対する対策に入っているわけで労働集約型事業者のビジネスのやり方は大きく変わり、また働く人の意識も変わらざるを得なくなりそうです。特に北米ではジョブディスクリプション型の雇用となっていますが、今後はメンバーシップ型に近い、いわゆる「マルチプレーヤー」の時代に戻る可能性が出てきています。日本ではこれからジョブ型の雇用にシフトするところですが、周回遅れとなった可能性があります。

例えば大きな飲食店やホテルの厨房では皿洗い、ファーストトキッチン、セカンドキッチン…といった具合にシビアなヒエラルキーが存在します。これらの垣根は下がるか、それこそ、皿洗いも厭わない人が求められることになるでしょう。私が進める開発事業の建築工事も現場責任者とは二つ以上の作業ができるような職人をうまく集めるように指示しています。

言い換えれば新しい働き方に於ける求められる人材とは主たる専門的能力プラスもう一つか二つの秀でたものを掛け合わせた人ということになります。日本でも一部の業種は専門化と分業体制が当たり前になっています。例えば美容師さんは髪の毛を洗うだけ、アシスタント業務、ハサミを持てる人など能力ごとの分業です。昔風の寿司屋もそうでしょう。カウンターの中を見ても巻物しか作れない職人さんもいます。これらは日本でいう職人気質が能力への理不尽な差別を行っているのです。

一般企業でも同じです。課長になれるには社内規定で10年目とか、部長にはそれから更に5年必要といった無意味な規定が能力ある人の頭を抑え、会社全体として凡庸なものを作り上げるのです。こうみると日本企業の行き詰まりの一つには人事政策にあった可能性も否定できないでしょう。

会社の規模の話をする際に「お宅の売り上げはどれぐらいですか?」と聞く人が多いと思います。会社一覧に業種と売り上げ額だけが書いてある資料も時として目にします。なぜ、売り上げ至上主義があったのでしょうか?私は昔のゼネコンにいたので売り上げ=役所仕事の入札能力という方程式があり、売り上げを上げるために赤字仕事も取るという本末転倒な事態が起きていました。日本全体に売り上げこそ命、と思っている頓珍漢が未だに多いのです。

日経に「『コロナ下で筋肉質』物色 減収増益組、上昇目立つ」とあります。今や売り上げを追う時代じゃなく利益がどれぐらいあるか、その資本効率はどうなのか、そこがポイントなのです。冒頭、私がオンライン化をすればいくらという話を振ったのはとにかく、売り手も買い手もより効率的になるようにしよう、という話です。とすれば例えばレストランでも店に客は来ないけれど鳴りやまぬデリバリー注文で厨房は大忙し、となるのです。ホールのスタッフが少ないので経営効率は高く、座席数に縛られないから理論的には無限に売り上げを伸ばすことができます。まさに発想の転換なのです。

ポストコロナの会社経営は極めてシビアな世界になるとみています。誰にその影響が出るかと言えば残念ながら従業員です。相当努力しないと雇用の確保すらないかもしれません。カナダ政府やブリティッシュコロンビア州では従業員が専門知識を学ぶための教育の受講料を負担してくれるプログラムがたくさんあります。但し、その教育はシビアで音を上げるほどのボリュームや宿題が出るところもあります。しかし、従業員もそれぐらい努力をしないといけない時代になったということです。

会社と上司の悪口を言いながら居酒屋でおだを上げていた「植木等時代」は遠い昔の絵図となったのでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年2月22日の記事より転載させていただきました。

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