「MMTとは何か」、どこが問題か

MMTとは何か』(島倉原著 角川新書)を拝読。

写真AC:編集部

これまでの経済学では、原始的な社会の取引は物々交換で行われていたが、それでは不便だったため、それ自体にモノとしての価値がある「商品」が、便利な交換媒体として用いられるようになったとする「商品貨幣論」に基づいていたが、

MMTでは、貨幣=支払い手段として用いられれる債務証書(=「信用貨幣論」)と捉える。その上で国定貨幣=国家を債務者とする特殊な信用貨幣としたうえで、貨幣による租税義務が貨幣を動かすとする。

MMTでは、そうした前提で、変動相場制の主権通貨国では、ハイパーインフレにならない限り、無制限の支出能力を有すると考え、デフレ下の日本では、金融の量的緩和だけでなく、国家財政においても緊縮財政をやめるべきだと考える。

過去20年間の諸外国の財政支出の伸び率と経済成長率は相関関係にあり、財政支出の伸び率を増やすことが経済成長率を伸ばすことにつながる、という。

しかし、これは因果関係が逆、すなわち、経済成長率が伸びたことにより、租税収入が増えて、財政支出が伸びたのではないか、と考えるのだ妥当だろうし、

一般論として、財政支出の伸び率が増えたときには、非効率/無駄な事業も増えるだろし、

また、仮に、信用貨幣論を認めて、制限の支出を実行した時に、

・過去の経済理論がそうであったように現実とは環境が異なっている場合や、
・あるいは、そもそも現実は信用貨幣論的側面と貨幣商品論的側面が混ざっている場合

も考えられ、不可逆的なことは慎重に検討すべきだろう。

幕藩体制下で藩政改革を行った人たちは、教育や殖産興業、情報公開だけでなく、マクロの財政も捉えて藩札の発行なども取り組んでいたが、僕もマクロの財政もしっかりと学んでいきたい。


編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2021年2月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。