今週のメルマガ前半部の紹介です。東京五輪組織委員会の森会長の女性をめぐる発言が差別的であるとして大バッシングを受け、辞任に追い込まれました。
ちなみに森さんの元発言を読みたいという人はコチラから。
【参考リンク】森氏 3日の発言「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」
筆者はその是非は問いませんけど、あまりにも日本中の氏へのバッシングが滑稽すぎて、途中からゲラゲラ笑いながら見てましたね。
なんて書くと「不謹慎だろ!」と怒られそうな気もしますけど、たぶん筆者と同じ視点に立てばみんな笑いだすと思います。というわけで、今回は筆者が“森バッシング”で笑った理由をまとめておきましょう。
多くの日本人は「森さん以上に無自覚で、森さん以上に性差別を支持」
昨年、世界経済フォーラムが毎年発表している男女格差指数ランキングで日本が過去最低順位を更新したことがちょっとした話題となりました。
アラブ首長国連邦とクウェートに挟まれての堂々たる121位です。むろん先進国中ぶっちぎりの最下位です。とりあえず大前提として、日本は世界に冠たる性差別大国なんですね。
指数を構成する要素を詳しく見てみると、経済115位、政治144位が大きく足を引っ張っていることがわかります。
その理由ですが、やはり終身雇用制度が、女性がベースとなるキャリアを積むことを阻み、結果として賃金格差や政治家へのキャリアを閉ざしているというのが大きいです。筆者はずっと以前から言ってきましたが、終身雇用制度というのは強烈な男尊女卑が根底にある仕組みなんですよ(その理由は後述します)。
たとえば多くの大企業ではコース別採用なるものが存在し、幹部候補である総合職と、事務一般で昇給も出世も限られる一般職なるコースが存在しています。
以前はそんなものはなかったんですが「同じ仕事、勤続年数なのに男性従業員よりはるかに低い賃金なのはおかしい」という女性従業員の訴えが認められたため、企業側が予防措置的に導入したものです。
「男女格差ではありません。コースごとに処遇が異なるだけです」という言い訳のためですね。でも総合職はそのほとんどが男性であり、一般職は100%女性というのは社会人なら誰でも知っている事実です。
外資しか知らない人なんかにコース別採用の話をするとたいていびっくりされますね。「それ一発アウトでしょ。ていうかそもそもなんでそんなことする必要あるの?」みたいな。
というか、そういう制度を黙認しつつ組織の一員としてお給料もらってる時点で、もう森さんにどうこう言う資格なんてない気もしますけどね(苦笑)
ちなみに総合職における女性の割合ですが、90年代は新卒100人採ったうちの2,3人くらいでしたね。その2,3人も大口取引先の娘さんみたいな縁故なので実質ほぼゼロと言っていいでしょう。
近年は2割を超えるまでに増えてはいますが(コース別雇用管理制度の実施・指導状況2014)、それも企業が多様化したというよりあまりにも新卒が少なすぎるから仕方なく増やしている印象です。
最終面接で男女で競ったら普通の人事ならまず男子を優先するだろうし、入社後の扱いにも見えない差はあるでしょう。中身変わってないんだから。
そうそう、東京医大が入試で女子を間引きしていたことが波紋を呼びましたけど、同じようなことは日本中の企業が採用でやっているわけです。21世紀の今でも。
さて、そんな終身雇用制度ですが、今回の件で森さんを叩きまくっていたリベラル系のメディアほど、なぜか終身雇用を信奉する傾向があるんですね。社説でその美徳を説くだけではなく、自らの組織でも実践し、きっちり女性をメインストリームから排除して見せてくれています。
はっきり言うと、筆者はIT系や電機なんかよりも、マスコミの方がよっぽど男社会だと感じています。
【参考リンク】「森会長だけの問題じゃない」マスコミで働く女性たちの危機感
筆者は森さんの発言の意図はよくわかりません。全文読んだけどグダグダすぎて理解不能。でも仮に毎日新聞の報じたように「女性は話が長いからダメ」みたいな意図だったとして。
話が長い云々以前に、採用時点で門前払いくらわせている新聞社に石を投げる資格あるんですかね。いや実際は投げまくってたわけですが。ね?もう笑うしかないでしょ?
むしろ森発言を受けて「森さんよくぞ言ってくれました!女に一人前の仕事は任せられない。女は家庭に入って男を支えるべき。男尊女卑は日本の文化!」くらいのエールを社説で書いた方が言行一致でスッキリしたと思うんですけど。
あ、「終身雇用が男尊女卑なんておまえが言ってるだけだろ!」という反論も予想されるので、最後に日本を代表するフェミニストの有名な発言を紹介しておきますね。筆者に文句がある人はまずはこの人にカチコミかけてください。
「専業主婦は社畜の専属家政婦である」
(上野千鶴子 東京大学名誉教授)
以降、
日本企業が女性を排除する論理
男女間格差が大きいということはそれだけ社会が非効率だということ
Q:「新興企業であっても評価制度は必要では?」
→A:「交渉の土台として、やはりあった方がいいでしょう」
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