「新型コロナウィルス感染症等の影響による社会経済情勢の変化に対応して金融の機能の強化及び安定の確保を図るための銀行法の一部を改正する法律案」を党の財務金融部会で了承しました。全体的な流れをつかんでおかないと、正確に意図が伝わらない恐れがありますので、ここで少し述べさせていただきたいと思います。
特にこの10年、Fintechなどの技術革新もあり、事業者等の資金調達手段も多様化し、金融ビジネスを取り巻く環境は激変をしています。付加価値が高い分野にどのように優秀な人材と資金を結び付けられるかが日本の潜在成長力を強化するカギだとすれば、金融仲介機能の強化はその中の欠かせないパートです。
こうした背景から、金融サービスへの様々な新規参入を促しイノベーションを加速するために、金融分野に関する規制も、いわゆる機能別・横断的な金融規制体系への転換、すなわち「業規制から行為規制へ」という大変革を進めてきているところです。
簡単に言えば、これまでは例えば、決済や資産運用、資金供与、預金等のサービスについてそれぞれのサービスごとにリスクに対応した必要な消費者保護や求められる基準は異なるにもかかわらず、それら全体を銀行法などの業法によって規制を行っていたものを、それぞれの行為に着目した規制に転換していこうということです。このことにより、個々のサービスに着目したスタートアップ等の新規参入が促進され金融ビジネス全体が活性化するという効果が期待できます。
そもそも金融機関側としても、急速な環境変化に伴って、従来の銀行ビジネスをはじめとする伝統的な金融ビジネスだけで今後収益を上げていくことは極めて難しい状況になりつつあります。特に地域金融機関である地方銀行などにおいては、オーバーバンキング的な状況もあり、またマイナス金利などもあり、厳しい状況にあります。むしろ広域の地域経済の中での戦略的M&Aにおける人材面を含めたアドバイザリー業務や地方創生におけるファンド組成などのプロデュース業務等にも軸足を置かざるを得ません。そのこともあり、これまでも、経営判断上、経営統合なども選択肢として検討できるよう独禁法の規定についても見直しを行ってきましたし、今回の法改正においても経営統合等をする銀行等のシステム統合費用に対する資金交付制度の創設が盛り込まれたところです。
加えて、今後様々なプレーヤーがその付加価値を高めるために金融サービスに参入してくる可能性が高まる一方で、金融機関側の長期的な経営戦略を考えれば、金融分野における環境変化を踏まえれば金融機関の最大の資産・強みは培ってきた信用とブランド力、人材そしてデータ・情報ともいえるわけで、そこを活用して価値創造・収益力強化につながるビジネスモデルを構築していかざるを得ません。
こうした大きな変化があり、そこに即した新たな法体系への転換を図っているところですが、その長期的な転換のプログラムのうち、現時点で行うべき制度改正ということで、今回の法改正を行う次第です。例えば、現状においては、他の事業を営む企業が銀行業に参入することは自由ですが、銀行には他業規制がかかるなどの不均衡があるので、著しい問題が起きる可能性がある分野を除きそこを認めること、あるいは香港の状況等に鑑み、国際金融センターを日本に誘致するにあたり必要な規制緩和などがその主な内容です。
もちろん、現実問題として現時点では金融機関が優越的な地位を有する場面もありますし、そうした事例も報告されていますので、金融機関による不当な優越的地位の濫用が無いように政府が適切な金融監督を行うことは当然必要です。しかし同時に、必要な制度改正を行い、日本の金融機能を強化していくことは日本の長期的な構造強化のために極めて重要ですので、今後、党内、与党プロセス、国会審議と議論が続いていきますが、着実に進めてまいりたいと思います。
編集部より:この記事は、衆議院議員の鈴木馨祐氏(神奈川7区、自由民主党)のブログ2021年2月26日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「政治家 鈴木けいすけの国政日々雑感」をご覧ください。