医療関係者のお手盛りワクチン優先接種は日本だけ

八幡 和郎

コロナ・ワクチン接種が医療関係者を優先で始まった。最初はコロナの最前線で戦っている人が少数優先されるだけかと思ったが、その数が300万人以上とか400万人とか聞いてあきれ果てた。

BillOxford/iStock

友人などに聞くと、医療関係者には自身やそこで働く人が接種を希望するかどうか、自分の機関で接種業務をしたいかアンケートが来てるそうだが、当然、入れてくれと言う人が多くなるから、医療関係者の総数はどんどん拡大しかねない。

それでは、世界ではどういう優先順位でしているかといえば、高齢者施設の入居者やそこで働く人が優先だし、医療関係といっても範囲はかなり限定されていようだ。

先日のBBC放送のニュースでは、職業はあまり考慮しないので、それぞれの団体などからそちらも考慮しろという声もでていると報じていた。その中には、学校の教員なども含まれている。

それにしても、どうして、日本だけ医療関係者と称する人にほとんど言い値で優先にしたのか。これはおかしい。医師会などの圧力に負けたのだとすると、政府もお医者様にそこまで媚びないと協力してもらえないのかと言いたい。

諸外国にない医師優遇を医師会などが要求したら、それを暴露して正義に適った優先順位を貫くべきだ。

以下、英仏独、それからアメリカのカリフォルニア州の優先順位を紹介する。アメリカは比較的に医療従事者優先だが、それにしても、日本ほどではない。しかも、これは昨年の早い段階に決められた方針によるもので、ヨーロッパにおける優先順位のほうがより慎重に考えられたものであろう。

イギリス

9つのグループに分かれていて、優先されるのは次の順である。

  1. 介護施設の入所者やスタッフ
  2. 80歳以上の高齢者と医療従事者
  3. 75歳以上
  4. 70歳以上
  5. 65歳以上
  6. 16歳から64歳で基礎疾患がある人
  7. 60歳以上
  8. 55歳以上
  9. 50歳以上

つまり、介護が最優先で、あとは「年齢」を重視しているといえる。

イギリス政府は、この1~9まで全部で、新型コロナで亡くなるリスクがあるグループのおよそ99%をカバーすると推定している。ちなみに、エリザベス女王は御年94歳なので、この2で優先順位の高いグループに入る。また、現在56歳のボリス・ジョンソン首相は、接種する様子をテレビ中継することを検討しているそうだ。

フランスのケース

高等保健機関(HAS)の指示をもとに政府が決定した。接種は無料、義務付けはない。

【第1段階】
老人ホーム居住者とその従業員から接種を開始する。65歳以上の長期入院施設で働く医療福祉関係者、医療運搬者の中でも併存疾患がある人。該当者は100万人ほどで、入荷できるワクチンの数に匹敵する。健康診断、ワクチン接種について説明をし賛同が得られたら接種。

【第2段階】
75歳以上。その後、65~74歳で併存疾患のある人。次に残りの65~74歳。医療福祉関係者、医療運搬者、長期入院施設で働く人。1400万人が該当する。

【第3段階】
50〜64歳の人と、50歳未満でも併存疾患のある人。セキュリティー、食品、教育関係者など。

ドイツのケース

ワクチン接種を希望する全ての人のための十分なワクチンが無いため、高齢者施設や介護施設の入所者、80歳以上の者、及び高齢者と接する介護職員や高齢者施設職員が、最も優先度の高いグループ(第1グループ)として最初の接種対象となる。

連邦各州が12月27日にワクチン接種を開始する際には、上記に加え、第1グループには、集中治療、緊急治療及び救急サービスに従事する者等、新型コロナウイルスに曝されるリスクが非常に高い医療スタッフが含まれる。また、重大な疾病又は死亡に至るリスクが高い疾病の患者、例えば移植医療の患者を看護する看護師も含まれる。

上記の最も脆弱な人が保護された後、ワクチン接種は段階的に拡大されるが、この最初の目標を達成するには、少なくとも1~2か月が必要とされる。

政令によれば、次に優先度の高いグループ(第2グループ)には、70歳以上の全ての者、及び臓器移植を行った者等の重篤な疾患のリスクが高い者が含まれる。また、機動隊員のほか、要介護者・妊婦等と濃厚に接触する者も含まれる。

第3グループには、60歳以上の者、慢性腎臓病・慢性肝疾患・自己免疫疾患・癌等の疾病リスクが高い者、家庭医や検査機関のスタッフが含まれる。警察、消防、教育、司法分野の職員も含まれる。また、小売業の販売員に加え、季節労働者・配送センター及び食肉加工業の労働者等の困難な労働条件で働いている者も含まれる。

カリフォルニア州のケース

フェーズ1A
•介護施設(SNF)の居住者と医療従事者。
•その他の介護施設の居住者。
•ウィルスと接する可能性のある医療従事者。

フェーズ1B
•65歳以上の人。
•教育と育児の従事者。
•警察、消防、救急などの緊急サービス従事者。
•食糧・農作業従事者。

世界各国では、このような明確な優先順位で、ワクチンが提供されている。