創業から30年以上成長を続ける大手不動産会社の創業者の方と久しぶりにお会いして、ビジネスの相談にのってもらいました。
不動産業界はアベノミクス以降の金融緩和によって物件価格の上昇が続いており、その中でこちらの会社も堅調に業容を拡大しています。
しかし、30年前の昭和バブルの崩壊時には、300社あった同業が10社にまで淘汰されるという経験もされています。そんな、マーケットの激しい変動の中で生き残るために大切なことは「固定費を下げること」だと教えられました。
こちらの会社のオフィスは、清潔感に溢れた明るい内装ですが、大手不動産会社が一等地に作っているようなピカピカの豪華ビルではありません。簡素で無駄のないオフィスです。
会社経営で固定費として大きな比率を占めるのが、オフィス費用と人件費です。
人件費は優秀な人材を獲得するために必要です。オフィスも働く社員にとって魅力的でモチベーションが高くなるような工夫が必要ではあります。しかし、過度に豪華なオフィスは、会社の損益分岐点を上げることになり、売上が少しでも下がると赤字になってしまう脆弱な利益構造になってしまいます。
業績が好調ならば問題ありませんが、外的な要因によってその回転が止まってしまうと、あっという間に業績悪化に陥ります。
数年前に訪問した地方の中古一棟ものを販売している不動産会社は、六本木の高層ビルにオフィスを構え、商談をする打ち合わせスペースは高級なバーのような設え。その豪華さに度肝を抜かれました。スルガ銀行のフルローンで融資を付けて大量販売していましたが、同行の融資不祥事によって業績は急激に悪化してしまいました。
企業が長期で生き残り、成長していくだめには、経営環境の想定外の悪化でも何とか対応できる力が必要です。攻めるだけではなく、守りに強い経営基盤を作っておくことが必須ということです。
コロナ禍で飲食店の廃業・閉店が相次いでいますが、その理由の1つは損益分岐点が高いことにあると思います。平常時の売上を前提に経営体制を作っていると、想定外の環境変化に脆く、サバイバルできないのです。
「過剰に豪華なオフィスを構えている企業は危険」とお会いした創業者社長は言っていました。30年間の荒波をかいくぐってきた実績のある人の言葉だけに、説得力を感じました。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年3月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。