緊急事態宣言再延長にちょっと待った

こんにちは、東京都議会議員(町田市選出)
無所属 東京みらい おくざわ高広です。

kazuma seki/iStock

 3月2日 深夜2時(3/3 AM2:00)、久しぶりにゆっくり睡眠を取ろうと思っていたけれど、まったく眠れなくなり、この記事を書いています。

というのも、「一都三県緊急事態宣言の再延長を要請へ」という報道が飛び込んできたからです。

やっぱりか、と思うと同時に、不安感や恐怖心、悔しさや無力感に襲われています。 

1.一都三県の感染拡大の状況は?

年始早々の宣言を求めた際と同様に、再延長の要請も一都三県で一体的に取り組むとしていますが、あらためて感染拡大状況をみていくと、その多くがステージ2または3となっていることが分かります。

※NHK新型コロナ特設サイトより抜粋

これまで都においては、

ステージ3相当になった場合には解除を検討する状況と考えており、最終的には国が判断すべきこと

という姿勢を表明してきた中で、今回の再要請はその考えを変えることであるのは明らかです。なぜ再延長を要請するのか、しっかりと説明責任を果たす必要があり、小池知事の説明を待ちたいと思います。

2.緊急事態宣言の検証は?

そもそも論として、緊急事態宣言を再延長したから感染が収まるのかどうか、という問題が検証されていません。

緊急事態宣言の目的は「人出を抑え、接触機会を減らし、感染を抑制すること」という認識ですが、東京都政策企画局のデータを見ると、緊急事態宣言と人出と感染状況は必ずしも一致していませんし、発症日別の新規陽性者数のグラフを見れば、緊急事態宣言前の1/4時点でピークを越えていることが分かります。

※東京都新型コロナ特設サイト発症日別新規陽性者数

宣言の再延長の前に、新型コロナを抑制するために何が有効で、どのような対策をうとうと考えているのかを説明しなければなりません。

3.メッセージとしての緊急事態宣言

関西圏の宣言解除に伴って「感染防止対策にゆるみがでる」可能性を懸念する声が多く聞かれました。一都三県の知事や医師会の関係者などからの声です。

ここで間違えてはいけないのは、緊急事態宣言は「ゆるむ・ゆるまない」といったメッセージ性の話ではなくて、特措法に基づいた厳しい対策をするか否かの話だということです。

もしメッセージ性のために緊急事態宣言を発出しているのだとすれば、特措法や感染症法を改正して罰則規定までおいた意味を問われます。どのような対策をとりたくて宣言を要請しているのか、これまた説明する責任があります。

4.届かないセーフティネット

先日、知人の言葉で印象に残っているのが「緊急事態宣言下での生活が常態化(当たり前)になってきた」という言葉です。実は、緊急事態宣言下での生活は、多くの人にとっては即座に痛みが出るものではありません

じわじわと真綿で締め付けられるように、経済の悪化や社会不安の増大といったダメージが出てきます。今は無利子融資や様々な給付金で乗り切っている事業者も、そう遠くない将来に厳しい資金繰りを迫られます。今は雇用調整助成金で守られている雇用も、その期限が過ぎれば一気に解雇が増えることも予想されます。

若者や女性、障害者などの(働くという場面において)社会的に弱い立場にある方々への解雇やシフト減少といったことは顕在化しており、(特に若者の)自殺者の大幅な増加は看過できるものではありません。

こうした方々へのセーフティネットは残念ながら届いていないのが実情であり、宣言再延長となれば更なる対策に迫られます。これについては、先日の一般質問で取り上げましたが、誠意ある回答は得られませんでした。

5.世論で判断してはいけないコロナ対策

これまで述べてきたことを冷静に考えれば、緊急事態宣言の再延長という答えにはたどり着かないというのが私の率直な考えです。もちろん新型コロナ対策そのものを否定するものではありませんが、広く影響を与えるものではなくピンポイントで対策を講じるように変化させていくべきという考えです。では、なぜ再延長へと傾いているのでしょうか。その可能性はいくつかありますが、

一つは、医療提供体制のひっ迫状況が思った以上に悪い可能性があるということ。これまで長期間にわたる厳しい対応で疲弊している医療機関や保健所のことを考えれば、感染をできるだけ抑制したいという考えは分かります。しかし、そのために必要なのは、医療機関等へのより一層のサポート体制であり、効果的な感染対策の提示です。緊急事態宣言はそうしたことを解決してくれる魔法ではないことを念頭に対策を講じる必要があります。

また、ワクチン接種に向けてさらなる体制強化が必要との考えもあると思いますが、であれば、どれだけ必要になると想定し、そのためには感染状況をどれほど抑えなければならないかと説明する必要があります。

二つ目は、オリンピック・パラリンピックへの影響を懸念している可能性です。観客の受け入れについては3月下旬を目途に決定するとの報道がありますが、本日(3/3)開かれる五者会談でも議論になるとされています。先日、都庁幹部が「東京2020大会への影響を懸念している」旨のコメントを報道で目にしましたが、もしも東京2020大会のために再延長を考えているのだとすれば、言語道断です。

あくまでも、私たちの暮らしの延長線上にある希望の光なのであって、希望の光を灯すために多少の犠牲はいとわないという考えを持つことは許されませんし、そのような大会が受け入れられるわけがありません。

三つ目に、世論(せろん)を背景にしている可能性です。世論調査によると8割が再延長に賛成という内容を目にしますが、ここには落とし穴があります。それは、多くの国民に対して判断をするに足る正しい情報が届いていないということです。

賛成と答えた人の多くが、宣言を再延長して感染が収まればいいとの考えから答えていることと思います。しかし、先ほども述べたように宣言と感染抑制が必ずしも一致していないとしたらどうでしょうか

賛成と答えた人の多くが、自らの暮らしにさして影響が出ていない人なのだと思います。しかし、それが自らの身に降りかかっても賛成と言えるのでしょうか。そして、すでに全国で8万人以上が解雇され、6千人近い学生が退学や休学となり、また明日食べるものにも苦労している人がいると知ってもなお、賛成と言えるのでしょうか

また、私に対しても向けられる言葉なのですが、緊急事態宣言の再延長は不要だと言うと「新型コロナはどうでもいいのか」といった非国民的なレッテルを貼られるということも問題です。繰り返しますが、私は感染拡大を防ぎたいとは考えていますが、宣言の再延長には否定的な立場です。

また、賛成意見の多くは「感染の拡大する一部地域にしぼって」という答えですが、東京都ですら、すでにステージ2または3という状況であり、これを感染拡大地域と捉えるのか否かも意見が分かれるところです。

世論をそのまま受け取ってはいけないと考えるのはここであり、そもそも、新型コロナへの賛否は(情報の不足している)国民に委ねるべき性質のものではありません。それどころか、私たち都議会議員でさえどれだけ正しく必要な情報が得られているのかといえば怪しいものです。つまり、この判断は知事や総理といった人にしかできない構造になっており、正しい情報をもって、対策の全責任を引き受ける覚悟をもって決断し、説明責任を果たしていく必要があります。

6.まずは説明責任を

先日の一般質問でも取り上げましたが、(百歩譲って)緊急事態宣言の再延長を要請する、つまり、これまでの目安としてきた指標を変更し、戦略の変更を行うのであれば、見るべき指標や目指すべき目安、(宣言下でしかできない)より効果的な対策や支援策を一体的に提示し、丁寧に説明する責任があります。そこで初めて賛否両論の議論が巻き起こるはずですが、私たちも説明を待つしかないというのが現状です。

今日か明日には都議会にも説明が行われると思いますので、それを待つとともに、事あるごとに考えを伝えていきたいと思います。ご意見などお気軽にお寄せください。