親の離婚後の子どもの養育に関する問題の解消に向けて、上川陽子法務大臣は2月10日、法制審議会総会で家族法制の見直しを諮問した(拙稿:「共同親権」導入も議論:離婚後の養育をめぐる課題解消に向け、上川法相が法制審に諮問)。これを受けて3月4日、超党派の国会議員らで構成する「共同養育支援議員連盟」の総会が衆議院第二議員会館で行われ、法制審議会への諮問の報告と、別居している側の親と子の面会交流支援の取り組み状況について、法務省や厚生労働省の担当者が説明。総会は非公開で行われ、各党から20人以上の議員が参加した。
また、議連は、「面会交流」という用語について、「刑事施設等に収容されている者が想起されやすく、親と子が継続的に会うことを表す用語として必ずしもふさわしくない」として、「親子交流」と表すことや、法制審において、養育費の支払い確保だけを検討するのではなく、「車の両輪」である親子交流についても足並みをそろえて検討、答申することなどを盛り込んだ政府に対する緊急提言について検討を行った。
国会でも、予算委員会で立憲民主党の真山勇一参議院議員が3日、共同親権への検討について菅首相に答弁を求めた。真山議員は、離婚の際に、女性が子どもを連れ去る問題があること、最近は男性が子どもを連れ去ることも増えていることなどを指摘。
外務省の24か国を対象にした親権問題に関する調査のデータを示し、単独親権しか選べないのは日本など3か国のみで、「子どもにとっては離婚してもお父さんでありお母さんであり、両親がいるのは大切なこと。共同親権か単独親権かどちらか選べる選択的親権制度があってもいいのでは」と提言した。
菅首相は「(連れ去り問題については)私自身も承知して、憂慮している。今後子どもの利益を始め、幅広い観点から検討したい。まずは法制審の検討を見守りたい」と答弁した。
離婚後の親権問題をめぐっては、国際結婚の増加に伴い、離婚後に自分の子どもに会えない外国人当事者も増えており、昨年7月にEU議会から日本政府に対し、非難決議が出されている(拙稿:EUが日本非難!「子ども連れ去り」を止める法改正を)。また、一方の親のみに親権が付与される単独親権制度による親子の引き離しで精神的苦痛を受けたなどとして国家賠償請求訴訟が起きており(拙稿:親子を引き離す「単独親権制度」を放置:父母6人が国を提訴)、親子の引き離しが起きないような制度の構築に向け、各省連携した抜本的な対応が求められている。