アセアンの学生に、日本の地域づくりについて話す機会を頂いた。
日本は、南北にとても長く、一山を越えると、食事も文化も歴史も景色も祭りも異なる多様な国だが、首都圏に過度に人口が集中することにより、少子化や低成長などの問題が顕在化している。
アセアンの国々でも急速に都市化や首都圏一極集中が進むが、メリットだけではないことを理解してほしい、と伝えたところ、「なぜ日本は首都圏に集住するのか」という本質的な質問をいただいた。
これは、難しいが、
1)戦時下に、経済の中央集権化が勧められた。戦後もその流れが続き、大多数の業界団体などは東京に集約された。堺屋太一さんの本には、「敵は米国にあらず、大阪にあり」。すなわち、戦後の経済の大目標は、当時の主力の繊維業を大阪から東京に持ってくることだったとも書かれている。今でも東京以外に全国組織の本拠があるのは神戸市の全国海水養魚協会くらい。
2)人口比と比べても多くの大学が首都圏に集中し、卒業生がそのまま就職した。
3)日本特有の同調圧力の中で、東京に行くのがトレンドになり、東京でなければ優秀な人材が集められなかった。本来はどこでも働くことができるICT企業も東京に集積している。
4)世界屈指の鉄道網で、大量輸送と定時運行が実現した。ちなみに、世界の鉄道利用(人キロ)の30%は、日本である。
ということだろうか。
とすると、一極集中の問題が顕在化する今の日本では、この逆の動き、すなわち、首都機能や業界団体の分散、大学の地方移転、同調圧力をゆるめることなどが求められているのではないか。
編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2021年3月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。