当方はウィーン時間8日午後1時50分からCBS放送のヘンリー王子とメーガン妃とのインタビュー番組を観た。ヘンリー王子夫妻がテレビ放送との長時間インタビューを受けるのは昨年3月、英王室を出て以来初めて。司会者は米国で有名なトークショーのオプラ・ウィンフリーさん。
ヘンリー王子夫妻が英王室を出ていくことになった背景に質問が集中した。司会者のウィンフリーさんはメーガン妃との対談の最初に「メーガン妃のスタッフ虐め」というメディア報道の真偽を聞いた時、メーガン妃は「事実ではない」と否定する一方、メーガン妃が欧州に入って以来、英王室の慣習に慣れるために苦労したが、「助けを求めても、誰も助けてくれなかった」と述べ、英王室での孤独な日々を語った。「絶望から自殺も考えた」と吐露した時、彼女の目が少し潤んだ。
当方がインタビューの中で関心を引いた点はメーガン妃が英王室を「Institute」(インスティテュート)という表現で何度も呼んでいたことだ。英国国民は英王室を「会社」「カンパニー」と呼んでいる。英王室という「会社」を如何に守るかが英王室関係者にとって至高の使命という。インタビューの後半、対談に加わったヘンリー王子も「自分も兄ウィリアム王子も(そのインスティテュートに)囚われている身だ」と語っていたのが印象深かった。
メーガン妃は息子アーチーに王子の称号が与えられないということをヘンリー王子から聞いて、驚いた。王子の称号がなければ、英王室からの保護が得られないことを意味するからだ。その理由について「誰も答えてくれなかった」という。メーガン妃がアフリカ系米国人の母を持つ血統であり、「子供の肌の色がどうなるか」で英王室関係者の間で話し合われていたことを知って、さらにショックを受けた。
メーガン妃は恣意的かどうかは別として「英王室の人種差別的発言」というテーマに拘っていた。司会者が別のテーマに話を移そうとするとき、メーガン妃は「肌の色」という問題に戻そうと腐心している。実際、同対談を報じた外電は「メーガン妃が英王室を人種差別的と批判」と速報を流していた。
同時に、ヘンリー王子が英王室から追放されたため、その保護がなくなったことを指摘し、メーガン妃は「ヘンリーには保護が必要だ」と訴えていた。司会者が数回、「どのような保護を必要としているのか」と訪ねたが、彼女からは曖昧な答えしか戻ってこなかった。メーガン妃は対談では英王室関係者の具体的な名前を挙げて批判することを避けていた。
ヘンリー王子だけではない。メーガン妃も自身の歩みをヘンリー王子の母親ダイアナ元妃の悲劇にオーバーラップさせている面がある。同時に、ダイアナ妃の息子ヘンリー王子の保護を求めるメーガン妃には、ダイアナ妃が単に交通事故死ではなかったという思いが強いのかもしれない。
英王室でアフリカ出身の血統が広がることを警戒する何者かが暗躍しているのだろうか。その何者かは英王室を管理する人物、組織、会社経営者ということになる。エリザベス女王も英王室の存続を担当するメンバーに過ぎないとすれば、英王室関係者を牛耳っている何者かが背後にいるはずだ。「ヘンリーには保護が必要だ」というメーガン妃の発言の真意は英王室から出ていった王子に具体的な危険があるからかもしれない。
バチカンは「秘密の宝庫」といわれてきた。長い歴史を通じ、時の教皇を通じてその組織を陰でコントロールする存在が暗躍している、といわれてきた。米大統領選でもメディアでは頻繁にディープステート(DS)という言葉が登場してきた。この場合、米大統領選を陰で牛耳っている組織、国家、グループの存在を意味していた。彼らはあらゆる手段を駆使して目的を全うする。英王室にもそのような影の支配者がいるのだろうか。
メーガン妃との対談を聞いていて、「メーガン妃は英王室で幽霊を見たのではないか」と漠然と感じた。メーガン妃は英王室に住んでいる霊的な存在に恐怖を感じ、王室から逃げていったのではないか。「子供の肌の色」について話していたという情報について、ヘンリー王子もメーガン妃もその発言者名を明らかにしなかったのは、英王室関係者の名誉を守るという目的からではないことは確かだろう。ひょっとしたら、一種の幻聴かもしれない。ヘンリー王子はその声を聞き、メーガン妃に伝えた、というのが真相ではないか。ちなみに、英メディアは「子供の肌の色」問題を取り上げたのは失言が多いフィリップ殿下ではないかと推測している。
影の支配者、幻聴、そして幽霊といった言葉を使用すると、「当方氏はいよいよおかしくなった」と冷笑されるかもしれないが、当方は真剣だから、もう暫く忍耐してほしい。長い歴史を誇る欧州の王室には至る所に幽霊がいるのだ。人が神に話しかければ、「あの人は信心深い人」といわれるが、神が彼に話しかけたといえば、「彼は狂人だ」と冷笑されてしまう。ヘンリー王子もメーガン妃も「英王室で出現する幽霊の話」はタブーだ。誰だって「狂人」と思われたくないからだ。
ただし、ヘンリー王子夫妻には結婚後、幽霊が付きまとうことになる。エリザベス女王はヘンリー王子夫妻に結婚祝いに新居を与えている。イギリスのノーフォーク州にある王室所有のサンドリンガム別邸だ。周辺は美しい自然に恵まれている。外観は素晴らしいが、実は幽霊屋敷として知る人ぞ知る謂れのある屋敷だった。
その屋敷にエドワード7世の息子、アルベルト・ヴィクター(クラレンス公)が生まれた。アルベルトは家族からエディ(Eddy)という愛称で呼ばれていた。彼は学校ではあまり成績の良くない子供だった。大学では豊富な自由時間にポロを興じたり、様々な享楽に耽った。女性から男性、アルコールから麻薬まで全ての享楽の世界に入り込んでしまった。そして1892年、肺炎で死んでしまった。28歳だった。歴史家によると、死因は肺炎ではなく、梅毒だったという。
問題はエディが亡くなっても彼は自分の屋敷から離れようとしなかったのだ。エディの死後、弟のジョージ(ヨーク公)家族が住んだが、彼らは「屋敷に暗いオーラが漂い、心地よくなかった」という。それ以降、誰もその屋敷に住む者がいなくなったというわけだ。
エリザベス女王はエディの話を知っていたはずだが、その屋敷をヘンリー王子とメーガン妃の結婚祝いに贈呈したわけだ。女王には悪意がなかったはずだ。当方の解釈だが、「若い彼らならば幽霊が出ようが問題ないだろう」と女王は軽く考えていたのではないか。その話を聞いた直後、ヘンリー王子夫妻は別の屋敷を探しているというニュースが流れた。
幽霊は英王室だけに出現しているわけではない。スウェーデンのカール16世グスタフ国王の妻シルビア王妃は、首都ストックホルム郊外のローベン島にあるドロットニングホルム宮殿について「小さな友人たちがおりまして、幽霊です」と述べている。2017年1月4日放映のスウェーデン放送の番組の中で語った。ドロットニングホルム宮殿は17世紀に建設され、世界遺産にも登録済み。王妃は、「とても良い方々で、怖がる必要なんてありません」と強調した。国王の姉クリスティーナ王女も同じ番組で、「古い家には幽霊話が付きもの。世紀を重ねて人間が詰め込まれ、死んでもエネルギーが残るのです」と主張。王妃の話を支持したという(「欧州王室に『幽霊』と『天使』が現れた!」2017年1月6日参考)。
最後に、なぜ幽霊はヘンリー王子とアフリカ系の母親を持つメーガン妃の間から生まれる子供の肌の色について囁いたのか。幽霊は英王室の歴史と関係があるはずだ。アフリカ大陸から欧州に連れてこられた人物かもしれない。それとも何らかの不祥事で亡くなった英王室関係者かもしれない。幽霊の出自を調査するのは難しいが、英王室には幽霊が住んでいるとみて間違いないだろう。
王室育ちのヘンリー王子にとって「王室に住む幽霊」との出会いは初めてではなかっただろうが、米国の女優世界から英王室入りしたメーガン妃にとって文字通りショックだったはずだ。その幽霊が「生まれてくる子供の肌の色」に関心があることを知って、メーガン妃は恐怖を感じたはずだ。それが、英国国民を震撼させたメグジット(メーガン妃と英国EU離脱=ブレグジットを繋ぎ合わせた表現)の真相ではないか。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2021年3月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。