次の大震災で日本の財政金融は破綻の危機

「今日と明日がよければ」の無責任

東日本大震災10年を迎え、気がつくべきことは、日本は世界有数の地震国であり、次の大震災に襲われたら、すでに先進国最悪の状態にある日本の財政は破綻に陥るという視点です。政治も国民も「今日と明日さえよければ」という無責任から抜け出すことです。

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財政・金融政策は、危機というか戦時に備えておかなければならないのに、デフレ対策という呪文を唱え、効果があると信じ込み、政権は平時に異常な金融緩和、財政膨張策を続けてきました。「今日と明日がよければ」という平和ボケを後悔する時がきています。

日本特有の地震などの自然災害に加え、リーマン・ショックといった金融危機、新型コロナ禍のような社会経済危機がグローバリゼーションによって世界中に瞬時に伝播するようになってきました。日本は自然災害と経済危機に対する二重の備えが必要なのに、政策を使い果たしつつある。

「2011年3月を境に日本列島の地盤は大変動の時代に入った。9世紀に超巨大地震である貞観地震が発生して以来、約1000年ぶりの事態です」

地震学者の鎌田浩毅・京大教授の指摘(月刊文春4月号)です。日本列島周辺のプレート・震源域が連動し、次の大きな災害が誘発される可能性も高い。

経済のグローバリゼーションの進展とともに、一つの異変が次々に連鎖する構造が形成されています。バブル経済が破綻すれば国境を超えて連動する。各国に跨るサプライチェーン(供給網)の形成によって、ウイルス感染症は瞬く間に世界に拡散します。

阪神淡路大震災(1995)、リーマン・ショック(2008)、東日本大震災(2011)、新型コロナ危機(2020)に続いて、巨額の通貨供給が生むマネー・バブルはいつ崩壊してもおかしくない。日本の場合、危機回避のための対応が二重にのしかかり、すでに先進国最悪の財政状態です。

「次の大震災(M7-8)が30年以内に発生する確率は70%以上」との警告が発せられています。先の鎌田教授は具体的には「M8級の東日本大震災の余震、首都直下型地震、富士山の噴火、南海トラフ巨大地震」を予測しています。

「地球科学の目でみると、首都圏は砂上の楼閣。都心東部のゼロメートル地帯や地下鉄はひとたまりもない」「富士山は若い活火山なので、今後、必ず噴火する。東海道新幹線、東名高速という日本の大動脈が寸断されかねない」と、恐ろしい予想を断言しています。

東日本大震災の復興予算は32兆円でした。地震と津波による直接被害額は17兆円(原発事故は含まず)で、阪神淡路大震災の9・6兆円の2倍近い。首都直下型地震は95兆円と想定されています。金融機能や物流機能のマヒ、経済停滞などの負の波及効果を含むと、対策費は膨大になります。

新型コロナ危機対策はどうでしたか。第一次補正(48・4兆円、20年4月)、第二次(72・7兆円、5月)、第三次(40兆円、12月)と巨額で、当初予算と合わせると20年度の歳出は179兆円と、天文学的な数字です。際限なく規模を拡大しないと、政権がもたなくなり、野放図に数字が巨大化する。

バイデン米大統領は200兆円規模の新型コロナ対策予算を組みました。そうしないと選挙で負ける、マネー市場のバブルが崩壊する。どの国も同じようなことをするようになりました。日本が違うのは、それに自然災害対策が上乗せになることです。

日本の家計金融資産は1900兆円(20年9月末)で、現預金は1030兆円です。「これだけあれば、国債をまだまだ発行できる」という説を聞きます。この説は本当なのでしょうか。預金は940兆円で金融機関にあります。金融機関は国債や貸し付けですでに運用されています。

家計の金融資産をあてに、新規の国債を発行しようとすると、金融機関は保有している国債を売却するか、企業への貸付を回収しなければなりません。そんなことをすると、国債は暴落、企業倒は多発しますから、現実的な案でありません。あちらを立てれば、こちらが立たずです。

メディアはもどかしい復興の様子、遺族の悲痛な叫び、遅遅として進まない原発事故の処理など、手厚く報道しています。全く足りないのが財政金融の悲惨な状態です。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2021年3月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。